第3話 聖女のお仕事って何するの?

 ──謁見の間。


「よく来てくれた、ディアナ」


「お初にお目にかかります、ディアナでございます。この度は王宮へのお招き、誠に恐縮でございます」


 ふかふかの赤い椅子に座る王に対し、お辞儀をして謁見するディアナ。

 その脇には、ディアナを王宮へ連れてきたアルバートと従者のクライヴもいた。


「父上、昨日お話した【聖女】の資質を持ったディアナでございます」


「話は聞いているよ、ディアナ。出自のことも聞いた。王族や貴族への恨みなどもあるかも知れんが、王宮のため、民のため働いてくれると助かる」


「あ、いえ、もう過去のことは忘れましたので、恨みは一切ございません」


「へ……?」


 王は気の抜けた顔をする。

 アルバートも同じ表情でディアナを見つめる。


「私にとって出自はどうでもよいこと。それより、週休3日制とお給金4倍、あと三食保証は本当でしょうか?」


「え……、ああ本当だ。アルバートからその待遇でと聞いているよ」


 それを聞いたディアナはキラキラと輝いた表情をし、鞄の中から紙を一枚取り出した。


「それでは、念のためこちらの紙に王の署名をお願いしたく存じます」


「「「──っ!」」」


 その場にいた者たちが、その大胆かつ用意周到なディアナの行動に度肝を抜かれる。

 王は一瞬驚きで動きが停止したが、正気に戻るとディアナに返答した。


「わかったよ。エルドレッド、その紙をこちらへ」


「かしこまりました」


 王の側近であるエルドレッドが、ディアナから紙を受け取り王に渡す。

 王はその紙を受け取ると、署名欄にサインをして再びエルドレッドに戻す。


 ディアナのもとに王の署名付き契約書が戻ると、満足そうに笑みを浮かべ礼を言う。


「ありがとうございます!」


「話は聞いていると思うが、聖女の職は全て今アルバートに任せている。仔細はアルバートから聞いてくれ」


「かしこまりました」


 ディアナは深々とお辞儀をする。


「では行こうか、ディアナ」


「はい」


 アルバートに連れられて謁見の間を後にしたディアナだった。




 ディアナのいなくなった謁見の間では、王とエルドレッドが言葉を交わす。


「そろそろ”あの件”を動かす頃かもしれんな」


「”あの件”をでしょうか」


「ああ、王妃にも確認するが、ディアナは適任かもしれん」


「かしこまりました、王」


(”あの件”を動かすとは王は相当……)






 ──アルバートの執務室。



「それでは、今日から聖女を頼んだ!」


「はい!」


「……」


「……」


「……」


「……」


「あの……、私は何をすればよろしいのですか?」


「知らん!」


「……はい? 自分で学び取れ!」


「あの……どこの偉いさんの言葉でしょうか?」


「こっちは実際王子だよ……」


 ディアナの言葉に呆れるアルバート。


「まずは衣装選びからではないでしょうか?」


「「そこ?!」」


 クライヴの予想だにしない言葉に突っ込む二人だった──

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