第10話 新幹線

 新幹線に乗って三十分位しか経ってないのに、

 タカヤったらとなりですぐ寝ちゃうものだから、寝顔をこっそり撮っちゃった。

 自撮り写真の練習ついでに巻き込んだものだけど。

 視線が合ってないし、何かズレてるけど、せっかくだから保存しておこう。

 

 ふとテーブルを見ると、レモンチューハイが一缶空っぽになっている。

 昨日は行きの新幹線から呑んでいたから、朝っぱらからだったっけ。

 全く、呑み過ぎだよ。

 

「なあリカ、今どこ?」

 

 あなたが突然起き出すものだから、あたしは思考を一気に現実に引き戻した。

 

「あ、ごめん。アナウンス聴き逃しちゃった。確か福島通り過ぎたあたりだったと思う。広島はまだだったはず」

 

「着くまで後一時間強だから……そうだね。まだまだやね」

 

 しばらくすると、車内販売のカートの音が聞こえてきた。

 カートが傍で止まったと思ったら、あなたはコーヒーともみじ饅頭を頼んでた。

 スマホで写真を撮ってたから、きっと後でSNSに上げるんだろうな。

 

 新幹線の窓から外を覗くと、闇の帳が降りてきていた。

 乗ってすぐはまだ明るかったのに。

 もう十月の半ばだから、当然か。

 今やほんのりとわずかに残る夕陽が残り火のよう。

 消えそうで、消えない。

 だけど、そのうちすうっと消えてゆくのだろう。

 一日、一日減ってゆく命の光のように。 

 

 中々一緒にお休みとれる機会はないけど、

 また今度一緒にお休みとれたら、

 出かけよう。電車で。

 

 次はまた違う所へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る