第8話 枯れ葉

 一陣の風が通り抜け

 足元の枯れ葉を巻き上げた

 纏わりつく髪を払いながら

 肩に付いた紅葉の葉を手にとった

 

 もう秋か

 

 つい先程まで桜の花が咲いていた気がしたのに 早いものだ

 もう少ししたら また

 花開く季節がやってくるのだろう

 

 花は咲いても

 あの人はもう居ないけれど

 

 変わりゆく季節

 移りゆく時間

 私自身も変わってゆくが

 止まったままの私も居る

 

 行かないで!

 行かないで!!

 行かないで!!!


 桜の花が咲き乱れる中

 口には出せず

 他愛ない会話と笑顔で隠し

 心の奥底に飲み込んだ魂の木霊達

 

 時折溢れてきては

 私の脈を乱らせる

 

 今枝ばかりの桜の樹の前で

 時が一瞬だけ立ち止まる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る