第7話 鱗雲

 気が付けば青空には鱗雲

 日中にまだまだ暑さが残りつつも

 どこか肌寒く感じる今日この頃

 つい最近まで透明だったココナッツオイルが

 瓶の中で白く固まっている

 

 春先にばさりと切った黒髪

 いつの間にか去年と同じ位

 すっかり枝毛が無くなった毛先を指に巻き付けつつ

 ふと記憶が蘇る

 

 音信不通になってしまったあの方は

 今元気にしているだろうか……

 鼻の奥が痛くなるのは

 気温が下がったせいだけでは無いのだろう

 

 手の平の上で転がしていた

 風船葛の実の中から

 ハートマーク柄の黒い種がぽとりと零れ落ちた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る