第3話 言葉?

 「佐城さん!佐城さん!起きて!起きてください!」


  …死ぬかな。

 死とは気づかないものである。朝には死んでいるなんてよくあることだ。例えば、心臓病ならいつ発症てもおかしくはない。

 だが佐城こうじはおかしいことに気づく。

 (なぜ思考できている?)

 死ぬことは人生で一回。しかし、考えることができないことはわかるだろう。


 死とは、身体の機能が止まることを指す。脳だってそうだ。ならば何故?


 その時、3つの光がこうじを襲った。まるで、身体に纏わりつくかのような動きであった。

 こうじは逃げようとしたが、その行動をするには遅かった。身体に纏わりついた光が足を、腹を、と上がってくる。

 12秒後には、全身を光が包んだ。

 こうじは光が何なのか疑問に思いつつも、この奇妙な光から逃げられないか調べた。

 

 1分ほどで、纏わりつく光から逃げられないことを悟った。何故なら、第一に身体が動かなかった。死んでいるから動かないのは当たり前だが、考えることができるから動けないわけではないと思ったが、どうやらそういうわけではないらしい。次に、光によって周りが見えないためである。動けないに加えて周りの状況がわからないとなると、どうにもできない。

 (流れに任せるしかないか。…はぁ)


 変化があったのは、体感時間で一日ほど経ったときだった。

 急に光が体内にはいっていく、流石に焦ったこうじは、どうにか動こうとする。だが、どんなに動こうとしても動けない。こうじには、焦りと恐怖しかなかった。光はまるで蛇かのように、動きながら体内にすべて入った。


 その時、何故かこうじの心の中が恐怖ではなくなり安心に変わった。まるで、妻、息子が周りにいるかのような安心感だ。その安心感が薄くなると、こうじの身体は動くようになったが、一日動かしてないから、立つことすらままならない。

 

 少しして、こうじが動けるようになったが、光がなくなってもあいも変わらず周りが見えない。見えないと言っても、青い空。それが写る海のようなものしか見えず、困惑しているが、その景色は、ここが神の住まう土地と言っても信じてしまうだろう景色であった。

 それほどまでに、美しい景色だった。もしカメラがあるなら誰だって写真を取るであろう景色に釘付けになっていると、身体がとてつもない痛みに襲われた。その痛みは、なにかの間に挟まれ少しずつせまくなっているような痛みであった。もし人が見たなら気を失ってしまうかのような叫びだ。だがこうじの身体には傷一つついていない。


 少しずつこうじの叫び声が小さくなっていった。


 

 (………ん?私は誰)

 こうじが起き上がったと思ったら、私は誰と誰かに問う。

 まるで記憶喪失になったかのように見えた。立つことすらせずあたりを見渡す。すると、あのときのような光が、こうじのそばを照らしたかと思えば、光から一人の男性が出てきた。一度頭を下げたと思ったら、少しこうじの方により、あと5mほどで止まり、


「すいませんでした。」


 と一言いい、次のことを状況を説明した。

 まずこうじは今記憶喪失であり、原因は自分であるといったことを話した。だが、こうじは何を言っているのかわからない。

 何故なら、言葉すら忘れたからだ。男性は、そのことに気がつくと、一言こういうのだ[忘れ去られた記憶を返しておくれ]と、しかしこうじの身体には変化はない。ただ目の前にいた男が安心したかのような表情をこうじに向け、説明を続けた。


 

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