第2話 プロローグ2 私に空いた穴を埋める方法

 あれから1週間


 心が落ちつくまで妻程の時間は掛からなかった。

 一度経験したからか、それとも、考えたくなかったからか。そんなことを考えていたときリビングの窓から近くにある山が見えた。        国でも、なかなかの大きさであの山には神社が建っており、初詣もあの山にいった。

  空の壮大さも去ることながら、木々によって何種類かの色が彩られ、力強さとともに、私の心に空いた大きな穴を埋めてくれるような優しさがある。などと思っていた。

 すると、会社の先輩から「今から1週間後まで休んでいいよ」という連絡が来た。この先輩は、妻が死んだときから知り合いで、今の状況を知って言ってくれたらしい。

私は、「ありがとうございます」と返信し、一息ついた。


「あの山に行ってみようかな」


そんな考えが出たのは何故だろう。

 私の心に空いた穴を埋めてくれるような、そんなちっぽけな希望を持って次の日に山に行くことにした。


 山につくと、以外にも観光客などはあまりいなかった。

 今の時期は秋で、一歩一歩あるくたび落ち葉を踏み、音がなる。鳥達の鳴き声と、風の音、彼の歩く音しかなかった。

 神社で手を合わせずに、ひたすら頂上にむけて歩みを進めた。1時間半でおよそ3分1までついた、だがこうじは歩みを止めない。そして3時間半ほどで頂上についた。肩で息をしていおりベンチで休んだ。

 今は自然の音しかなかった。熱くなった身体に風が当たる。少しずつ熱が冷める。こうじはベンチから見える景色に釘付けになった。


 「美しい…」


 私の心に空いた穴が少し小さくなった気がした。


 帰ってもあの山でみた景色が頭から離れなかった。

 まるで美しさが私の人生からこぼれ、今また拾ったかのような感動が、私に駆けめぐった。

 


 それから約10年


 私は国関係なく美しい景色を探している。心は落ち着き趣味になった。

 だが、こうじの命も病に侵され残り少なくなっていた。

 

 美しい景色を探すきっかけになったあの山に登ろう。

 そしてこれを最後にしよう。そう決めてあの山に登った。


 あのときのように落ち葉を踏み歩いた。

 あの感動を、景色を 歩くごとに早くなっていく私。そこまで求めていたのかと驚き、走った。

 頂上につき、すぐにあの景色を見た。


 「……!!」


 こうじは頭が打たれたような感覚が襲った。

 あのとき見た景色から大きく変わっていた。自然と家が混ざった美しい景色から家ばっかりの寂しい景色。

 確かに人工物で美しいものもある。だがそれは、自然と混じったからこそ美しいのだ。

 驚き、困惑がこうじの頭を支配した。


 帰宅

 驚き、困惑は、少しずつなくなった。

 人の生活のために自然が奪われた。その結論に至った。人がいらないとしたとき、美しい自然はなくなる。


 その結論が自分の中で肯定されればされるほど寂しくなった。


 次の日 


 あの写真の前で問う、


「なぁ、この世界の美しさってなんだ」


 彼が静かに呟く…



 

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