第4話 TE25 ニセD装着

4ヶ月ほど乗ってきたTE25

梅雨明けも近くなり、おっさんのTE25は、普通には走っていた

しかし、何処となぁく手を入れたい


まずはタイヤだ


解体屋の栗原曰く、ジムカーナ車のタイヤは回収されたので

その辺の解体車から取った、165/80-13のラジアルタイヤ

ブレーキパッドは幸い、ジムカーナ車から剥ぎ取れたのでそれを着けてる

ほぼ新品という幸運だった


だが、タイヤとのバランスが悪い


雨の日だとかで、フロントロックをするときがある

他には、ノンスリの効きはいいが、なんか中途半端で

大人しくするか、バキバキに効かせる化したい

などと、部屋で考えていると、寮の先輩から


「おっさん、女から電話だぞ」どでかい声で呼び出し


ダッシュで電話まで向かう

息を整え黒い電話の受話器を取る

「もしもし、おっさんです」


「おー、女じゃなく悪いな」栗原だ


お「まぁな、心当たりが有ったんで、がっかりだけどね」


栗「がんばってるな、それよりニセDだけど6分山のが入ってきた

  アルミも付いてる」


ニセD アドバンタイプDというハイグリップタイヤが市販されて

60という扁平率で、皆度肝を抜かれたんだよな

それで、70扁平率のも発売され、こっちはニセDと呼ばれる悲しいタイヤだったんだ


鉄チン+165/80-13からアルミのニセDの185/70-13だとだいぶランクアップする


お「キープよろしく」


栗「2万な」


お「了解 それと栗原 ノンスリの効き調整できる?」


栗「どっちだ?」


お「出来る方でいい、今がちょっと中途半端になってきてるんよ」


栗「俺、調整ってバキバキ方向しかしたことがない」


お「それ、調整と言わんw まぁタイヤと込で3万でどう」


栗「デフオイル代やパッキンで俺の工賃がでないんだけど」


お「じゃぁ、呑み一回」


栗「そういや神田が企画してるのに合わせるか」


この異世界は飲酒運転に異様に寛容(アメリカ並)で

真っ直ぐ10m歩ければOKとかユルユルな異世界であった

流石にフラついて歩けないのは捕まると言われていたが

そんな時代でもあった


なので、昼間に車いじって楽しんで呑もうとなり

休日前に休みをとり、やろうと言うことになった

まだ、土曜日も半分は仕事な時代でもあったしな


そして、梅雨明けした頃、晴れた土曜日に

栗原・加藤・佐々木とおっさんの4人が集まっていた

佐「加藤 神田はどうした」


加「抜けれん仕事で、夕方から参加するって」


栗「それなら、おっさんのTE25ただでくれ の話は

   呑みの席で全員で聞けるのか」


お「そんな大層な話じゃないけどな」


栗「これだ ニセDだけどまだ山もある」


加「いいじゃん、とりあえず着けて峠行ってみよう」


お「いいけど一人二本までな デフもやらんとあかんし」


加「デフやるんか、どっち?」


お「栗原はバキバキ方向しか経験がないらしい」


栗「まぁ、そう言うことで」


佐「先にデフやろうよ、バキバキのノンスリで峠とか楽しそうじゃん」


加「そうやね」


佐「点火時期とキャブセットは見ておきたい」


お「キャブセットやるん? ジェット類は詰んであるけど」


佐「プラグも見とかんとな、もってる?」


お「標準と一番手上は、新品が各4本」


佐「やっぱ、おっさんに抜かりはないな」


栗「決まったか 上げるぞ」


さくっとガレージャーでフロントが浮き馬が噛まされ

リアも同様に馬が噛まされた

助かるのは、エアインパクトが使えるので、タイヤ交換が楽

フロントタイヤを外した所で、ブレーキパッドの残り具合の

チェックをするおっさん


お「見にくいなぁ、ピン外すわ 14のコンビと17の薄いスパナちょうだい」

加藤がトランクに積んである工具箱から出してくれる


加「コンビがスタビレーで、薄いスパナってハゼットの事かよ 凝ってんな」


お「まぁな、守川商事の爺さんの口車にせられてw な」


佐「あそこか、あそこは行ったらあかんw」


加「どんな店なん」


異世界でもその時代、輸入工具を扱う店は極端に少なく

またその店も偏屈な親父がやっていたりした

KTCのミラーが出る前で、まだ海外工具に一歩譲っていた時代だ


佐々木が加藤に守川商事の事を説明している

その間に、栗原がリアタイヤを外し、スライディンハンマーでドラシャを抜く

さっさと潜って、デフオイルを脱いてデフも外されて

工場の作業台に持っていかれる


おっさんも、パッドのチェックが終わり、7分残りなのでとりあえず安心

しかし、セミメタのパッドでジムカーナ用 低音での効きを優先してるし、

競技用と割り切ってキーキーと鳴る警報のバネも着いていない

高温に晒すと一気に減るので、峠メインだとこまめなチェックが必要なのだ


パッドのチェックも終わり、ニセDの山の残ってる2本をフロントに付ける

ついでにマジックで、タイヤ位置をアルミにでっかく直書きする、おっさん

加「おっさん、いつも思うんだが、それなんとかならんのか」


佐「おっさん、タイヤ位置にもみような拘りがあるからな」


加「それにしても、内側に書くとかさぁ、もうちょっと見栄えを考えろよ」


お「ひと目で解ることが大事」


加「そうだけどさぁ、おっさんの車ってひと目で」


佐「今どきに、TE25 転がしてりゃ一目でおっさんて解る」


お「ラブホテルで見かけたら、そっと流してくれw」


加「解ったw」


リアのタイヤにも太い黒マジックでタイヤ位置を書くおっさん

さ「点火時期とプラグ見とくか」とボンネットを開ける


加藤がプラグを外して、並べていく


3人で順にチェックしていく

佐「気筒でのバラツキはないけど、焼け気味かな」


加「うーーん、一番手上げるかどうか、悩むな」


お「梅雨もあけて夏だしな、上げといてキャブセットでどう?」


佐「これこそ気筒番号書いとけよ まだ使えるし 秋になったら戻すんだろ」

とガムテに番号を書いて、プラグに貼っていくおっさん

ウエスにくるんで、ビニール袋に入れてトランクの部品箱にしまう


新品の1番手上のプラグを出してきて加藤に渡す

なぜか、昔からプラグの脱着は加藤の役目だった

「俺の車、EFIだから、着けっぱでいいんだけどな」

と、プラグを着けながら加藤がぼボヤく

良いのか悪いのか


佐「今どきSUツインとかチェリーとか25位しかないからな」


お「だから、お前らも面白がってきてくれるんだろ」


佐「27のソレックスでも来るぞ」


加「間違いない」


プラグ交換も終わり、エンジンが掛かり、空ぶかし

タイミングライトが工場から借りてこられ、チェクされる

そうこうしている内に、栗原がデフを持って現れる


栗「こんなもんだろ」


加「交差点でバキバキいうのか」


栗「そこまでは、いわんと・・・思う」

何故か語尾が小さい


「バキバキ行ってもええやん、楽しむ車だしな」おっさん


「そうそう、楽しむ車やん、おれもSUツインの勉強してきたし」佐々木


お「楽しんでくれ」

栗「よし組むわ」と潜っていく


「よし、オイルポンプくれ」

加藤が、90番のデフオイルの入ったオイルポンプを渡す


おっさん的には交差点バキバキのレベルでも構わない

今の2T+SUツインのうちにノンスリのバキバキに慣らす必要がるのだ

デフが入り、ドラシャがスライディンハンマーで打ち込まれる

ジャッキダウンされ


「おっしゃぁ、キャブセット行くぞ!!」と佐々木が張り切る


「おい、缶コーヒーでも呑んでから行こうぜ」とおっさんが

小銭をジャラジャラと出すと、栗原のお母さんが工場から現れ


「あんたたち、お茶も飲まんと行くつもりかい」と

 お怒りモードで声を掛けてくる


今宵も吹けたようで


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