第5話 神田からの電話

「頂こうと思ってたとこです、こいつが急かすもんで」手のひらを返す佐々木

やられた、と加藤とおっさん

「こないだも、ササと行っちゃて」って、それ春先の話、今梅雨明け


工場の片隅でタイヤを椅子・テーブルにしてのお茶

「そういやさぁ、なんでおっさんと神田って仲が良かったんだっけ」加藤がいう


「俺らは機械系で神田は土建やろ、で おっさんが化け」栗原


お「土建のポスドクの先輩覚えてねえか、シビックのラリー車乗った

  あの人の所で2年の時遊んでたら、土建の研究室でな

  制震工法のところで、ゴムを使っててな ゴムの性質とかで

  こっちの教授で好きそうな人が居て、話入れたら

  盛り上がってな、そっから卒研がプラント屋に自動的決まってな

  3年なんか土建の研究室入り浸りだったんだ

  そこで、神田と知り合ってな、そこから食され縁と」


栗「そんな事してたんか、日本の未来に貢献してんな」


お「おう、マジで貢献したらしいぞ 論文も何本も出てる」


佐「おっさん、そういうブリッジが多いな

   俺らも、おっさんの仲介で色々楽ができたし」


加「そうそう、守川商事もブリッジして紹介してくれよ」


佐々木とおっさんが「あそこは行かんほうが・・・」と口を揃える


「連れてって、工具の沼にハメてやれや」栗原が軽く言う


「流石は、スナップオンのバンが来る工場長は言うことが違うね」おっさん


事務所で電話の着信音 工場なので呼び出し音は外部スピーカーで大きい


「おっさん君、神田君から電話よ、今度はちゃんと顔出しなさいって

 言っといたから」と栗原のお母さん

なんだなんだ、皆で事務所の電話に向かう

スピーカーフォンにして皆で聞く


「おっさん、調子はどう」


「今、一段落して、お茶貰って一服中、これから峠で実走行でのキャブセット」


「悪いんだけど、うちの会社の人も明日乗せてやれん」


「なんでまた?」


会社関係とか利害関係のない仲間だから気軽に付き合えるのに


電話の向こうで、何やらもめている

「もしもし、私、山崎土木の山崎と申します」

速攻で、スピーカーフォンから通常に切り替え

「ちょっとお待ち下さい」と言って、受話器を塞ぐおっさん


お「おい、神田の会社ってデカイけど同族会社だよな」


栗「うんそう聞いたことがある」


加「今の社長が婿養子で、息子と娘が二人」


お「何でそんなに詳しいんだよ」


加「春先の待ち時間で色々聞いてな」


お「その息子と思って対応したほうが良いな」


皆が首を縦に振りまくる


スピーカーフォンに戻し

「もしもし、私、神田君の同期のおっさんといいます

 私の25に乗りたいとの事ですが、古い車で

 乗りにくいセットなんですが」


「望むところです、私のロードスターと比べましょう」


振り向くおっさん 

加藤が首を縦に振りまくる


「それは、山崎さんのロードスターと峠でヤルということですか」


「いえ、25と聞いて、27は有名で色々のインプレッションはありますが

 25は幻の車なんですよ、乗ってみたいとのお願いです

 しかも、今日セットアップされておられると神田君から

 聞いておりますので、明日なら皆さんのセットアップ完了の

 2T+SUツインが乗れるのではと、神田君に無理をお願いしております」


今度は、マイクを切らずに相談開始

お「エンジンは逝ってもいいけど、ボディをやられるのは困る」


佐「逝ってもいいって まぁ2Tならレギュラー仕様も落ちてるしな」


お「いきなり峠でハイどうぞはないわな」


佐「それ用にセットすれば、なんとか」

こっちで相談してると、電話の向こうから


「いえ、セットは皆さんの納得されるセットで

 我社の駐車場は300m四方ありますし、パイロンもあります」


「わるい、頼まれてくれん」と神田の声

向こうもスピーカーフォンの様だ

電話会議みたいになってる


また、マイクを切り受話器旗を塞いで

「完全に息子」

「間違いない」


再度のマイクオン

「プライベートジムカーナをやるとの事ですか

 それで、私の25を運転してみたいと」


「そうです、この案ならパイロンに擦る程度で

 いやもちろん、傷が着けば直させていただきますが」


佐「それなら、いつもより攻めたセットしたい」


栗「ノンスリもガッツリ効くはずだし、ニセDも付けたし」


加「私の車も走っていい?」


プライベートジムカーナの一言で

もうおっさんの意志は無視され始めた


「どうぞ、どうぞ、助手席に私を乗せて頂けるのなら

 そういえば、神田君が今晩呑み会とか行ってましたが

 それも私が持ちましょう、宿も含めて

 ガンガンにエアコンを効かせての鍋とかどうですか」


「のった」加藤

「神田 それはいいのか」と確認するおっさん


「そうして貰うと、俺の会社人生的には有り難い」


「つか、俺らに呑ますと、逆にお前の会社人生終わらんか」栗原が冷静に言う


「そこは、神田君のプラス査定はあってもマイナスはないことを保証します」


「って、皆言うんだよ、呑ます前は」おっさん


「いえ、信用はして頂きたく

 そして、私どもの会社に夕方 6時に来て頂きたく」


「どうする、本気みたいだよ」加藤


「そこまで言わせて、嫌だはないわな」おっさん


「行くかぁ」栗原


「聞こえてますよね、行かさせて頂きます」


「はい、ではお待ちしております」

という結論で合意を獲て電話会議は終了した


そして飲酒運転は回避されることになった


そして、峠での実走行でのキャブセットを行う4人

順に攻めていく佐々木のキャブセット

おっさん「これ以上攻めると返って乗りにくい、もうちょっと中が欲しい」


佐「ジムカーナだもんな、ピックアップが大事だし」


加「廻していった先よりも、廻すところでのトルクが欲しいよな」


峠の待機場でキャブを弄る佐々木


「おっさんでも、出来るだろうけどなんでやらんの」加藤


「出来るけど、このメンバーで集まったら佐々木に任すかなぁ」


「ヨシ、走って」と佐々木が言う

おっさんが2本走って、加藤に渡す


加藤が戻ってきて「これ、さっきより楽な運転が出来る」

佐々木も乗り「こんなもんかぁ、おっさんの中好みだな」

最後に栗原が乗って確認


ボンネットが開けられ、プラグが確認される

「ええ色に焼けとる」と加藤


「バラツキもないな」と佐々木


「じゃ、此の辺でOKと追うことで」栗原が〆る

そして、神田と山崎さんの待つ、山崎土木へと向かう4人であった


今宵も深けたようで

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