第45話 戻る

戻ってきた七は胸がズキズキしている。

繋がりのなくなったことは、彼女には。

少し悲しくもあった。

七は歩いていると、優衣が現れる。

「七様。おかえりなさい。ケガ…してない?」

「あ、優衣さん。勝てました」

七はニコニコする。

「ケガもないです」

優衣は七の手を握る。

連れて行く。

「七様。こっちにー」

優衣は家の方へ向かう。

「家ですか?」

「ここ、私が寝たりもしてるの」

「そうなんですか?」

家へ入ると多くのカレンダーが壁や地面に置かれ、貼られてる。

どうしてこんなにもカレンダーがあるのか。

「カレンダーですか?」

「ここってさ、月っていう感覚がない場所だから、カレンダーにマルつけてるの」

「そうなんですか」

部屋へ入るとベッドがある。

七を座らせる。

「七様。服脱いで」

「ええっ」

「体にすり傷あるはず。手当てするから」

「え……はい」

七は服を脱ぐと中のTシャツとなる。

すり傷だらけだ。

優衣は七の肌へ丁寧に小ビンの水を布に湿らせて七の肌へと触れていく。

優衣は言う。

「私たちは簡単には死なないけど、傷は残るし痛いからこうやったりして治すの」

「じ、自分でします………」

優衣は七の後ろで肩を掴む。

「だめ。私がする。幼なじみなんだよ?私」

「幼なじみ………」

「それに、私がしたいの」

七は、少しくすぐったさがあり、ピクリとする。

「………くすぐったい」

「じっとして。ちゃんとするから」

「………………っ」

「はい、次は足」

「足まで!?そっちは自分でします!自分で」

七は泣きそうな目をする。

が、優衣は真面目な顔をする。

「七様。はい、足出して」

「足はいいんで!本当に!」

七は足に触れられると大きな傷がある。

優衣は七へ質問する。

「これは…」

「地面に落ちた時かもです」

優衣はうつむく。

「ごめんなさい。あなた一人に戦わせ…けれどそうしないとここは望めないんです。ここはあなたの望んだ世界」

七は、クスッとする。

望んだ世界はいつだって……いいことはない。

「分かってます。なんとな……」

そこへ、光がやってくる。

ルルは玄関で待ち、魅井もいる。

「七お姉ちゃん!優衣お姉ちゃん!二人でずるいよー!」

二人に飛び込む。

「七お姉ちゃん。薄着だね」

光は舌なめずりする。

「かしかし…しよっか」

七の肩を食む。

「あ…七傷ある」

光は静かに小ビンの水を足に強く染み込ませる。

「いっ………たあ………!ひか、さん?」

光は容赦ない。

「治さないと」

「…………っ…………い」

光は強く押す。

「我慢して」

「はい…………」

優衣は光を見つめる。

この人は意外としっかりしてる。

あんなにもかわいく甘えてくるのに。

「終わり」

光は小ビンのフタを閉める。

「七お姉ちゃんの傷は……痛い、だね」

「あ、ありがとうございます」

「ほめられた。光はいい子。いい子だよ」

「はい。いい子です」

七はここにいて、ここでも繋がりはない。

七は、笑う。

「私、少し行きますね」

光はついてこようとするが。

七はニコと笑う。

光の頭を撫でる。

「一人で用があるんです」

「私もー」

七は笑顔で言う。

「ごめんなさい。光さん」

七は一人で外へ出ると玄関にルルと魅井がいる。

魅井は言う。

「勝てたか。七先輩」

「はい…」

七は逃げるように行ってしまう。



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