第5話 おばあちゃんVS激情

 僕は、おばあちゃんに怒ってしまったことがある。

 僕だけじゃない。お母さんも、お父さんも、兄弟も。


 でも仕方のないことだった。別に言い訳をしているわけではなく、ただその人のストレスが限界値に近い状態を、おばあちゃんがちょうどいいタイミングで突いてしまったがために怒られてしまうのだ。そしておばあちゃんは突く回数が多い。


 僕の記憶の中で初めに怒ったのは、何に使ったか分からないティッシュを集めて山のように積み、それが雪崩みたいに僕の聖域サンクチュアリを犯された時だ。

 今思えばそんなことで、と思うが当時の僕は相応に幼かったのだ。


「もう、ばあちゃん!だから紙集めるのやめろって言ったじゃん!」

「オラそんな集めてねえどなあ」


 といった感じで、本人は全く覚えていないのだ。でも認知症ではない僕からしたら苦しい言い訳にしか聞こえなくて、その山を蹴飛ばしておばあちゃんの前で舞わせてしまった。


 その時はおばあちゃんも申し訳なさそうにするのだが、30分もすればケロッと話しかけてくる。いやまあ、仕方ないのだが。

 そしてそれを見た僕もどうでも良くなって普段通りに戻ってしまう。


 これも僕のおばあちゃんが最強と言われる所以だった。


 ちなみに、ティッシュは枕の下にも、布団の下にも埋蔵してある。

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