第4話 おばあちゃんVS電子機器
僕のおばあちゃんは、たまにノートパソコンを使う。
ただ現代の機器をもうすぐ90にもなるおばあちゃんが使いこなせるわけもなく、開くだけで、画面の虚空を見つめてすぐ閉じる。訂正しよう。使っているとは言えなかった。
スッパタン、スッパタンと何度も開いては閉じる。
気になってしまった。だから思わず聞いてみた。
「スペースキー押さないと画面つかないよ、何をみたいの?」
「あ?なんだぁ?すぺ...?おら、はー、家が気になって見てたんだよ。お姉ちゃんよくここでみっからよ」
合点が入った。おばあちゃんは泥棒に入られてしまった自分の家が心配だったのだ。
今は僕のお母さんがおばあちゃんの家を管理していて、監視カメラを設置、動きがあると家のノートパソコンに写真や動画を送ってくれるためそれを確認したかったのだ。おそらくお母さんから見て学んだのだろう。開くと言う動作だけを。
他にも、僕のおばあちゃんは固定電話を使える。
何か不安があると外に出ている僕のお母さんに電話をするためだ。
何度か、おばあちゃんは間違えて変な人に掛けてしまったことがある。
それは、おばあちゃんがお母さんに電話を掛けたと思われた数分後に受話器が甲高い音で僕の集中や思考をぶちぎってくることで察しがつく。
初めての時は、びっくりした。でも話がわかる人で、チュートリアルみたいに対応が簡単だった。
僕が亀みたいな速度で受話器を手に取ると、
「はい、尾波です」
『うちも尾波ですけど。さっき掛けてきませんでしたか?』え?
なんと、同じ苗字の家におばあちゃんは間違い電話をしていたのだ。流石にびっくりしたが、事情を話すとその人は優しく許してくれた。
しんどかったのは二回目以降だ。
おばあちゃんがお母さんに掛けたであろう5分後。またうるさくピピっと人様の娯楽を邪魔してくる。
仕方なく出てみると、
『#$%&'('&%$#$%()0)('&#$%&'!?'&Q$&'$(&'$&Q!?#$%$#$%#$!!』
おふざけ電話と思ったのか、とにかく、すごいブチギレられた。何を入っているのか分からなかったから、すぐに切って着信拒否だけしておいた。
そして三回目だ。これに関しては気持ち悪かった。
「はい、尾波です」
『ねえねえ、さっきは楽しかったね。もう一度さあ...』
たぶん、次の言葉を聞いていたら吐いていたと思う。だから速攻で、でかい音を立てて切ってやった。いや、こちらが悪いと言えばそうなのだが。
とにかく、おばあちゃんはちゃんとお母さんと繋がった時は嬉しそうに話す。その先のお母さんの呆れたような、少し怒っているような角張った言葉は出てくるが。
それでも、寂しかったのだろう。本当に、にこやかだった。
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