第2話 おばあちゃんVS映画
僕の部屋はリビングの向かいにあるのだが、そのおかげでお父さんの映画の音がかなり鮮明に漏れ出てくる。正直うるさい。
それは、この日もはっきりと聞こえていた。僕も割と最近見た映画だったから大体何を見ているのか、どんなシーンを見ているのかは分かっていた。
やがて不穏な会話が聞こえ始める。これは、銃撃戦の前の会話だ。
僕は耳を細くして、それに備えた。確か、最初は。
ドーンっと大きな爆発音が鳴り響く。どうやら始まったらしい。こうなってしまえば後は気にならない。だから、読みかけの漫画を手に取った。
すると隣で地域雑誌を読んでいたおばあちゃんが、
「なんだ?
キョロキョロと辺りを見回して窓を一瞥すると、今日は快晴だった。
「おぉおお〜、やけに明るい雷様だなあ」
なかなか晴天の空を疑うことをやめなかった。だから僕は教えてあげたのだ。
「ばあちゃん、映画だよ。テレビテレビ」
「テレビどこだか。テレビなかっぺなおめえよ」
仕方ない、と漫画を元に戻してリビングに連れて行ってあげた。ただ運が悪いことに映画はだんまりを決め込み始めた。次のシーンに移ったのだ。
僕はすうっと青ざめた。この後は確か...。
男と女の人の、高い声と低い声が絡み合って場を占領する。僕はそっぽを向いて目を瞑ったが、お父さんがにやけているのは分かった。隣にぼっとするおばあちゃんは梅干しみたいに萎んだ目を、指を使って見開いて、まじまじと見ている。
「おーほほ、すげえなぁ。マッサージしてんのか」
もう、やめてくれ。見たくない。このカオスな空間に、耐えられない。
そんなこともあり、僕は見たい映画は映画館で、絶対に見逃さないと心に誓った。
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