尾行開始
地下鉄の駅のロッカーに向かうと、喪服の女は大きなボストンバッグを取り出し、女性トイレに向かった。
一度顔を見られてるので覚えていられたら困る。でも、後をつけながら、長い髪をお団子にし、ポケットに入っていたワニクリップで留めた。眼鏡をかけて、これで変身はバッチリやろ。
トイレの個室は6個。どれも使用中になっている。ナオは洗面所の鏡の前に立つとリップクリームを塗り直している風を装った。ちょっとドキドキする。
出て来たのは見るからにお年寄り。次に出て来たのは学生風の若い女の子。
出ては、入って来る。みんなどんだけトイレしたいねん。
治りかけていた鼻炎が再発して線香の香りを嗅ぎ分けられなかったが、入るときに持っていたボストンバッグの女が出て来た。女は手も洗わずに出て行った
金髪のショートヘアがペシャリと潰れていて、ウイッグをつけていたからや。ダボッとしたモスグリーンのロンT、ジーンズに黒のパンプス。そういう格好をする人もいるけど、ないわあ。普通はスニーカーやろ。
人が多くて見失いそう。
コナン君、まだやろか。はよ来て。
あっ、地下鉄に乗ってまう。
財布を持って来ていないナオは地団駄を踏んだ。
改札口の脇に立つナオの後から声がした。
「ナオさん入って」
コナン君はスマホを2回タップした。ああ、そうやった。スマホでもいけたんや。
「関空行きに乗ったと思うねん」
車両は結構混んでいて、コナン君に女の特徴を伝えると、黒のパンプスに金髪を目印に探っていった。
「次の堺駅まで5分、その間に探せるやろか」
人混みをかき分けて進んで行くコナンくんは、遅れがちなナオの手を握った。
「すみません」
「すみません」
と、真ん中に通り道を作ってもらい進んだ。
もう最後の車両まで来た。
見落としたのやろか。それとも逆方向の難波行きの電車に乗ったのやろか。
そのときだった。
コホッ、コッホッ、コッホッと咳が聞こえてきた。数回咳をすると、最後にクシャミをした。あの女がしていた特徴のある咳とフィニッシュがくしゃみだった。
ナオはコナン君と顔を見合わせた。
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