第318話 節分

【嵐side】


「お久しぶりです、アレス様……今は嵐さまですね 」


 恭華の旦那である鹿島光介かしま こうすけが挨拶にきた。


 性格の悪い恭華と違い、優しい良い男だ。

 確か、向こうの世界で、魔王としてあの世界を治めていたはず……


「『様』は止めてくれ。 この日本では人間 大江戸嵐なんだから、『嵐』と呼んでくれ 」


 恭華も光介も強大な魔力の為に不老に成っている。

 本当なら、孫の銀河がいるのだから、オジサン、オバ……


 バキッ !


「痛っ ! いきなり殴るな、暴力女 ! 」


 恭華が竹刀で殴ってきた !


「アンタが不埒ふらちなことを考えているのが悪い !」


 バッバッバッバッ バッバッバッバッ !


「にーにーをイジメるなぁー !」

「お兄ちゃんのかたきです !」

「アハハ。 これ、おもしろ~い ! 」


 陽野芽ひのめ星奈せな乱華らんかが、豆マシンガンを恭華に撃ってきた。


「痛ッタッ タッ タッ タッ !

 わたしは鬼じゃ無いのよ ! 何故、乱華まで撃ってくるのよ ! 」


 流石の恭華もチビッ子達には乱暴を出来ないようだ。


 玩具の銃でも良い子は決して、嵐お兄さんとの約束だ !


 乱華が光介を見つけて駆け寄った。


「パパ ! 乱華、良い子で待っていたよ !

 褒めて、褒めて ! 」


 乱華を抱き上げて甘やかす光介だが、本当の親では無い。

 前の魔王、竜王の卵から孵った時に最初に光介を見た為に親だと懐いているワケだ。


「どこが良い子よ ! いつも何時も、わたしばかり目の敵にして、何の恨みがあるのよ !」


「恭華、嫌い ! ランカ乱華は、パパ光介のお嫁さんに成るから邪魔 ! 」


 恭華がワナワナと震えている。

 そこに由利凛が、テポテポ とやって来た。

 まっ 不味い ! 由利凛も女神時代は光介のことが好きだったハズ !

 これは混沌カオスに成ってしまうぞ。

 案の定、恭華も警戒している。


「やあ、ユリリン。 元気そうだね。

 今は女子高生かな。 幼女から成長した姿を見るのは初めてだけど、綺麗に成ったね 」


 バカ、光介 ! 松ぼっくりに火が付くようなことを言うなよ !


「そうじゃろう、そうじゃろう。

 恭華なんか捨てて、妾を選ばなかったことを後悔しても遅いのじゃ !

 すでに妾には、ナギと云う彼氏が居るから残念でしたのじゃ ! 」


 これに恭華は驚いたのか、目を見開き絶句している。

 まあ、女神時代に散々、光介にアプローチしていたからな、ユリリンは。

 それにしても……この残念女神は、意外に一途だったんだな。

 てっきり、凪とは遊びだと思っていた。



 ◇◆◇◆◇◆


【由利凛side】


 不倫なんて妾はしないのじゃ !

 いまさら、光介の気持ちが妾に向くことが無いのは判っているのじゃ。

 幸い、素直で優しい凪と出逢い、妾の気持ちは凪に惹かれていった。

 人間に転生したせいか、女神時代のこだわりから解放された妾は新たな恋に生きるのじゃ !


 逆光源氏計画


 凪を妾の色に染め上げるのじゃ !

 恭華は、まだ妾を疑っている……進化、成長の無い奴なのじゃな。


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