第319話 恭華と蝶子

【蝶子side】


 嵐くんの家に遊びに行ったら、知らない女の子が居た。


〖ゲッ、 茨城恭華 !

 蝶子、アノ女には気をつけてよ !

 ものすごく凶暴な女だから 〗


 わたしの中に居るオバサンアフロディーテが震えている。

 あ~、アノ娘が恭華ちゃんか。

 オバサンアフロディーテが、ちょっかいをかけて反撃されたとか云う……

 自業自得よね。

 恭華ちゃんには旦那様が居るらしいから、嵐くんに対するライバルじゃないから敵対する必要も無いわ。


 わたしが近づくと恭華ちゃんがジロジロと見ている。


「アンタ……どっかで、わたしに会ったことある ?

 見たような気がするのに思い出せ無いのよね 」


 頭をひねりながら言う恭華ちゃん……


「ケッケッケッ。 もうボケたのか、恭華 !

 若作りしても実年齢には逆らえないのじゃな 」


 ブォン !


 恭華ちゃんの回し蹴りを由利凛ちゃんは軽くかわした。


「なっ 、わたしの蹴りを避けただと !

 ユリリン、いつの間に腕を上げたの ? 」


「お母ちゃんに十年近く鍛え上げられたのは伊達じゃないのじゃ ! 」


 恭華ちゃんの目の色が変わり構えを取った瞬間、


「茨城百烈拳 ! あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた おぅわったぁ!!」


 恭華ちゃんの拳が由利凛ちゃんを襲うも、


「潮来圓明流究極奥義 無想転生 !

 この奥義の前には 死あるのみなのじゃ ! 」


 アワワワワワッ ! この二人、殺し合いを始めている……

 嵐くん……はダメね。

 潮来圓明流の門下生の中では最弱。

 まだ、教わり始めた わたしにも無理。


「コウモリさん、コウモリさん、助けて !」


「ロ~ンブロゾ~ …………って、わたしはナゾーか !」


 結構、ノリの良い恭華ちゃん。

 気が合いそうだわ、わたし達。


「『ワハハハハハハハハハ…!!』と笑えばいいのか、俺は 」


 嵐くん、わかってる~。

 やっぱり、わたし達の相性は最高ね !



 ◇◇◇


 場がシラケたのか、恭華ちゃんも由利凛ちゃんも闘うのを止めてくれた。


「ヘェ~……アンタが、あのケバいオバサン……アフロディーテの転生者なの !

 若い頃は、清楚系ビッチだったのかしら?」


 口の悪い恭華ちゃんが挑発してくる。


「ひど~~い ! 蝶子とオバサンアフロディーテは別人なんだよ !

 確かに蝶子の中に居るけど、別人格なんだからね !」


 ジロジロと見てくる恭華ちゃん。

 疑り深いなぁ~。 信じる者は救われるって、誰かが言ってたよ!

 仕方ない、嵐くんの為に作ってきた“大学イモ„をお裾分けするか……


「恭華ちゃん。 お近づきの印に、蝶子の“特製大学いも„をプレゼントするわ ! 」


 蝶子が差し出した“大学いも„を見て恭華ちゃんが、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「そっ、悪いわね疑って。

 異世界に長くいたから、素朴なデザートは久しぶりだわ。

 向こうのお菓子は砂糖の塊みたいで、クドイのよね 」


 パタン !


 恭華ちゃんが、大学いもを食べた途端に顔を青くして倒れてしまった。


WINNERウイナァー、蝶子ちゃんなのじゃ ! 」


 由利凛ちゃんが蝶子の手を持ち上に上げた。


「蝶子……恐ろしい娘 !」

「アフロディーテなんかより危険ね、蝶子 !」


 明日菜ちゃんと英里香ちゃんが、蝶子を警戒していた。


 えっ、えっ、蝶子が悪いの ?

 蝶子の特製大学いもをプレゼントしただけなのに……


 何故か、嵐くんも由利凛ちゃんも震えていた……


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