第315話 復活のK

【嵐side】


 流石に真冬の中で野宿させるわけにはいかず、渋々ながら恭華を連れて家に向かった。

 由利凛たちは、天音姉ちゃんと一緒に自分たちが住む大江戸家の離れに向かっている。

 後でヘパイストスに魔王城が修復出来ないか聞いてみよう。

 何時もなら庭や玄関周りに居る猫たちが、恭華を見るなり逃げ出した。


 手をワキワキさせて猫を見ていた恭華はガッカリしている。


 ヘッ、ザマァ ! ドカッ 💥


「痛っ ! いきなり蹴るな、暴力女! 」


 このアマ、なんの躊躇ちゅうちょもなく蹴りやがった !


アンタアレスの考えていることくらい、まるっとお見通しよ ! 」


 本当にコイツ恭華は 遠慮も手加減もしない奴だよな。



「クッ クッ クッ、束の間の平穏を楽しんでいるようだが、これから闇と暴力、恐怖と絶望が支配する世界が始まるのだ ! 」



 その背から生えた五対十枚の黒き翼。


 全身から溢れ出るプレッシャー。


 堕天使コカビエルが復活しただと !


 クソッ、今の俺たちでは力不足だ ?

 また、由利子オバチャン頼みかよ。


「ふ~ん、こっちの世界も いろいろあるようね。

 大魔王の力は封じられているけど、非常事態だからしても良いわよね 」


 暴力の権化大魔王 恭華が嬉しそうに言っている。

 俺 ? 軍神アレスだった頃ならともかく、人間 大江戸嵐は平和主義なんだよ !


「潮来圓明流 金獅子百歩神拳 ! 」


 由利子オバチャンの右の正拳突きから黄金のライオンが空中を駆けて行きコカビエルを襲った

 !


「グギャアー ! きっ 貴様、本当に人間か !?」


 コカビエルが由利子オバチャンを見る目には恐怖が浮かんでいる。


 グイグイと恭華が俺の袖を引っ張りながら、


「ちょっと、何よアレ !?

 由利子おば様が、日本人のスタンダードなの ?」


「んなワケあるかぁー !

 由利子オバチャンが異常なんだよ !

 普通の一般人に、アンナ真似が出来るか !」


 あの傍若無人な恭華が少し震えている。

 邪神ロキやアフロディーテが襲って来た時でも恐れることが無かった恭華が……


「嵐……今日、オヤツ抜き ! 」


 ギャビーン !

 由利子オバチャンの一言にダメージを受ける俺。


 そして……真打ちである天音姉ちゃんが前に出て来て、


「千の剣よ、在れ!」


 一瞬にして顕現した空間を埋め尽くすほどの剣の嵐。


 その全てがコカビエルへ殺到し、剣山のように彼の姿を覆い隠して大爆発を起こした。


 うん、知ってた……天音姉ちゃんが天照皇大神の記憶を封印されていりフリをしているのを。


 コカビエルが聖書に出てくる伝説の堕天使でも神話の時代から存在している俺たちギリシャ神話の神々や日本神話の神々と比べれば新参者にすぎない。


 案の定、黒焦げに成ったコカビエルは墜落して動けないでいる。


 しょうがない、アザゼルに連絡して引き取りに来てもらおう。


 スマホでアザゼルにメールを送ると恭華が、


「天音さんといい、由利子おば様といい、後で詳しい話を聞かせなさいよ !」


 あの大魔王が震えている……まあ、仕方ないよな。

 三人の女神を産んで聖母神に成りかけている由利子オバチャンに日本神話の最高神だからな。



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