第307話 甘い罠

【嵐side】


 無い……無い 無い 無い、甘いモノ食い物が無い !

 今、俺は学校をサボって執筆している。

 由利凛に触発されたからじゃないぞ !

 ヨムカクコンテストに短編小説を書いているからだ。

 2エピソードを決まった期間に毎日連載すると『黒毛和牛のカタログギフト1万円分』が貰えるのだ !


 1万円分の和牛、食いでがあるぜ抽選で3名だけだけどな


 頭を使ったからか、脳が甘いモノ食い物を欲している。

 しかし、冷蔵庫を探したが、プリンどころかチョコの欠片さえ無いぞ。

 妹たちの女子部屋専用リビングにある冷蔵庫には有りそうだが、其処から取ると俺の命が危うくなる。

 小腹も減っているから、腹に溜まるモノが欲しいんだが……



 ピンポーン ♪


 ゲッ、由利子オバチャンが捕まえに来たのだろうか !

 逃げ出す用意をしていると、


「大江戸さ~ん、白猫ナデシコの宅配便で~す !

 いらっしゃいますかぁ~~ ! 」


 脅かしやがる、宅配便かよ。

 急いで玄関に向かって、扉を開けると若い兄ちゃんが居た。

 制服を来て無いから、アルバイトだろうか。

 まさか、押し売りじゃないよな……


「スイマセン、サインお願いするっス ! 」


 ……なんだ、気のせいか。

 俺はサインをすると、中身を確かめた。

 ヤッタァ ! 食い物、それも『ミセスドーナツ』の詰め合わせだ !


「ありっがとうしたぁ~ ! 」


 まったく、最近の若い者は……って、俺も若いが、もう少しキチンと話せないもんかねぇ~。


 が感謝するぜ !

 包装紙を破り箱を開けると、ドーナツの詰め合わせが沢山入っていた。

 よし、さっそく食べるか……


「あーー ! 嵐お兄ちゃんばっかりズルいのじゃ !

 妾も、妾も、ギブミードーナツなのじゃ! 」


 由利凛の奴も学校をサボっていたのか……


「ユリリン屋、お主も悪よのぉ~ 」


「お代官様ほどでは無いのじゃ !」


 そう、これで由利凛も同罪、学校をサボったのも先にドーナツをつまみ食いしたのも……


 ドン ドン ドン 、ガラ ガラ ガラ ガラ !


 いきなり玄関の扉が開き、


「スイマセンっス ! その荷物、ッス ! 」


 荷物を開けて、ドーナツをかじる俺たちと宅配便の兄ちゃんの目が合った。


 ガサゴソと由利凛が荷物の宛名を確認すると、


「本当なのじゃ ! 宛名は『夜野蝶子アフロディーテ』なのじゃ ! 」


 ゲッ、よりにもよって蝶子の荷物かよ !



 ◇◇◇


「バッカじゃないのぉー、ふたりとも !

 どうして、宛名を確認しなかったのよ ! 」


 英里香が烈火の如く怒り、明日菜は目頭を抑えていた。


「まさか、アフロディーテの策にめられた……

 アノお花畑に、こんな巧妙な策は出来ない……はず。

 背後に知恵者が居るのかしら……」


 明日菜がブツブツ言っていると英里香が苦々しそうに、


「チッ、厄介ね。 アフロディーテと違い蝶子の方は侮れないわ ! 」


 とりあえず、残していたミセスドーナツを持って、蝶子の家に向かった。

 この辺りには、ミセスドーナツの店が無い。

 後で買い直しをして返すつもりだが、ドーナツを楽しみにしていることを予想して、残したドーナツだけでも届けることにしたんだ。








 怒るかと思っていたら、あっさり許してくれた蝶子。

 弁償もしなくて良いと言われた。


 ただ、『クリぼっちは嫌だから、大江戸家のクリスマスパーティーに招待して欲しい』と言われたので了承した。


 家に帰ってから事情を話すと妹たちの目が憐れむようだったのは何故だ !


 俺、何か、ヤラカシたっ !?


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