第304話 心配

【英里香side】


「なっ ! 」


 驚いている于吉を問答無用で異界から現世に引きずり出した。


 みんなが無事に現世に戻ったところで、明日菜をジロジロと見る于吉。


「大江戸明日菜さんでしたよね。

 貴女は、いったい何物なんですか ? 」


 于吉が質問するも明日菜は平然としながら、


「わたしは普通の女子高生ですよ、于吉 」


 ニッコリ笑いながら言う明日菜に絶句している于吉。

 まあ、正直に『わたしは女神アテナです ! 』なんて言っても信じないでしょうしね。



「人生とは無情です。 この于吉を地上に生まれさせながら何故、大江戸明日菜まで生まれさせたのですか、神よ ! 」


 神など信じていない于吉がなげいているけど、その明日菜が知恵と闘いの女神アテナなんて思わないわよね、教える気も無いけどね。


于吉のことは気にするな。

 本人が言っている程、ショックを受けていないハズだ。

 どこまでが本気で、どこからか嘘なのかは、付き合いの長い俺にも判断に迷う程だからな 」

 左慈が、ウンザリしながら説明してくれた。


「すっかり、饕餮の支配から抜け出せたようね。

 まだ、世界を混乱に落とし入れて、大量虐殺をする気なのかしら ? 」


「それを言うな。 饕餮に支配されていた時の記憶は残っているんだ !

 饕餮は人間の奥底に眠っている欲望を増幅する。

 俺は闘争本能を、于吉は破滅願望を増幅された…… !

 おい、嵐の妹英里香 ! 早く日本を始めとしたスーパーコンピューターを止めないと戦争が始まってしまうぞ !

 饕餮に支配されていた于吉が、本国中国のスーパーコンピューター始皇帝を使って、世界中のスーパーコンピューターにウイルスを撒いたんだ。

 このままだと、核爆弾を始めとしたミサイル攻撃が世界中で撃たれてしまうぞ ! 」


 左慈……もしかしたら、そんなに悪い奴では無いのかしら ?

 わたしと左慈の話しを耳にはさんだのか明日菜が、


「心配無用です。 今頃は、わたしのお母様女神メティスとスーパーコンピューター▪オモイカネが対処しているはずです ! 」


 自信たっぷりに言う明日菜に、流石の于吉もタジタジに成っている。


「明日菜さんのお母様と云うと、大江戸勇気 氏ですね。

 大江戸グループの副社長にして、スーパーエンジニア。

 今の大江戸グループが世界企業に成長した立役者。

 まさに大江戸グループの頭脳と云う女傑ですね。

 虎の子は虎、龍の子は龍と云う訳ですね。

 納得しました 」


 明日菜が嬉しそうな顔をしている。

 女神アテナとしても大江戸明日菜としても、母親である大江戸勇気女神メティスが大好きなのだ。


 ピロ~ン ♪


 わたしと明日菜のスマホにお義母様大江戸勇気からメールが来た。


 ── 無問題モウマンタイ ! ──


 広東語カントンゴで書かれている内容を左慈や于吉に見せつけるドヤ顔をしている明日菜。


 …………この娘、親離れ出来るのかしら ?

◇◇◇◇◇


【由利凛side】


明日菜ちゃん達に合流しようとしたら、バイクに乗ったロッキー君に会ったのじゃ。

なんでも、この近くに千葉県名物の勝浦担々麺の名店があるらしい。

嵐お兄ちゃんは、明日菜ちゃん達と合流する前にロッキー君と一緒に勝浦担々麺を食べに行くことにしたのじゃ。


「いいのか、嵐 ? 後で明日菜や英里香から怒られても知らねえぞ !

いいか、俺を巻き込むなよ ! 」


「大丈夫、大丈夫、一休み、一休み。

こっちは仕事をしたんだから、少しくらいサボっても罰は当たらないだろう !」


嵐お兄ちゃんの脳天気ぶりに呆れつつも、妾もご当地ラーメンに興味を持っていたので、御相伴にあずかることにしたのじゃ。


「言っとくが、だからな !

俺はおごらんからな ! 」


ロッキー君に釘を刺されたのじゃ。

嵐お兄ちゃんの図々しい態度で、バレたのに決まっているのじゃ !

こうなったら、全ての罪を嵐お兄ちゃんに擦り付けてやるのじゃ。

そう、妾はだけの被害者なのじゃ !



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