第303話 脱出
【英里香side】
どうして ? 何故、急に于吉と左慈から
こけるが二人を起こそうとしているけど、
「おやめなさい、こける。
左慈も于吉も衰弱しているようだから、この異界から運びだして、大江戸グループの病院に入院させるから、于吉を運んでちょうだい ! 」
明日菜が言うと、こけるは嫌そうな顔をしながら、
「いやいや、俺が左慈を運ぶよ。
しかし、既にパラスが左慈を抱えていた……親猫が子猫を運ぶように着物の襟首の部分を掴んでいる。
絵面的には微妙な関係に見えてしまうだろう。
気のせいでは無いだろう、于吉の頬が微妙に引き攣っている。
狸寝入りなのは明白だ。
「しょうがないから、縛り上げて引きずって戻りましょうか 」
わたしが提案すると、狸寝入りをしていた于吉が起き出し、
「ちょっと待ってください !
あまりにも、私と左慈の扱いに差がありすぎるのではないですか ? 」
于吉が抗議するも誰もが無視している。
「クックックッ、普段の行いの差だ、于吉 ! 」
やっぱり、左慈も気が付いていたようだ。
「
ドサッ !
云うが早いか、パラスが左慈をポイっ とゴミを捨てるように投げてしまった。
「痛っ ! これだから、女って奴は……「文句ある !? 」
文句を言おうとした左慈をパラスが神気を出して黙らせてしまう。
最初は
女神時代に
アテナにしても、罪の意識にさいなまれパラス▪アテナと名乗っていた時期もあった程だから、みんなで人間に転生したのは良いキッカケに成ったのかも知れない。
「チッ ! 」
「あきらめなさい、左慈。 この
抵抗するだけ無駄ですよ 」
「その
「こける、何をしているの !?
さっさと異界の扉を開けて現世に戻るわよ ! 」
しかし、こけるは茫然とある部分を見ていた。
「ああ、
これは直すまで時間がかかりそうです 」
二人が見ている先を見ると台座に……ルービックキューブ !?
「古代のアーティファクトである神秘の聖六面体を
いやぁ~、私の頭脳を持ってしても揃えるのには、相当な時間がかかりましたからねぇ~ 」
自慢気に眼鏡をクイッ と上げながらドヤ顔している于吉を殴りたいのを我慢してルービックキューブを観察する。
ガチャガチャとルービックキューブを揃えようとした こけるがハタと気付いたのか、
「そうや ! 」
ルービックキューブを分解し始めた。
バラバラに成ったルービックキューブの部品と骨組みに成った残骸のルービックキューブには、それぞれの中央に六色のキューブが残されている。
その中央の色に合わせてバラバラに成ったキューブを当てはめていく、こける。
「なっ ! ズルです、卑怯ですよ、こける君 ! 」
于吉が抗議するも、
「卑怯で結構、花らっきょう !
勝てば官軍なんだよ、于吉 ! 」
悪い顔をしながら言う こける。
どっちが悪党なのか判断に迷うような行動をするところは、まさに
「どうだ、揃ったぞ ! 」
ズルして揃えたルービックキューブを誇らしげに見せつけるも……
ガチャガチャ ガチャガチャ ガチャガチャ !
ルービックキューブは勝手に元の揃わなかった状態に戻ってしまった。
流石、古代のアーティファクトね。
ズルは許さないと云うワケね。
「だから、言ったでしょう ! 」
于吉が自慢気に言う。
優秀な自分が苦労して揃えたルービックキューブをズルして揃えた こけるを非難しているのだろう。
しかし、相手が悪かったわね……
「構造が理解出来れば簡単です ! 」
「そろいました ! 」
アーティファクトのルービックキューブが揃うと現世への
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