第301話 呪術師

 🥜🍉県 とある神社


【嵐side】


 蝶子のクッキーダークマターを食べてから、調子が悪い。

 まるで、力の半分をもぎ取られた感じだ。

 そのせいか、この神社の空気が凄くよどんでいる気がする。


「悪い。 ちょっと他の場所で休んでいるから、異界の入り口を見つけたら、メールで教えてくれ 」


 そう言って、神社から離れた。

 俺が病み上がりだからか妹たちはおろか、こけるまで黙っていたから、よっぽど顔色が悪いのかも知れないな。


 テポ テポ テポ


 俺を心配?したのか、由利凛が追いてきた。

 町は閑散としていて人通りが少ない。


 俺たちの前を一匹の黒猫が通り過ぎようとして、


 ── もし、殺したいほど憎い奴がいるのなら、アタシに追いてこい。

 憎い奴の写真か髪の毛があるのなら、尚よい。

 お前の寿命の十年を引き替えにアストが、この世ならざる力でそいつを呪殺してくれるだろう ──


 猫魈サファイアとも違う妖しい黒猫の後を追いて行くと、古びたビルに入っていった。


 ── このビルの最上階に呪術師のアストが居る。

 望みがあるなら、訪ねるがよい ──


「エレベーターは動くのじゃろうか ?

 五階まで登るのは疲れるから嫌なのじゃ 」


 由利凛が駄々をこねると、


 ── エレベーターは動かない……

 まったく、最近の人間は階段を登るのも面倒くさがるのか ──


 黒猫は、リズミカルに階段を登って行ってしまった。



 ◇◇◇


 階段を登ったら、綺麗なフロアーに成っていた。

 他の階が廃ビルのようだったので意外だ。

 ドアには『ASUTO』と書いてある。

 外国人だろうか ?


 チャイムを鳴らす……ガチャリとドアが開き、中から幼女が出て来た。

 白い髪に紅い目……アルビノだろうか ?


「ドウゾ……コチラへ 」


 幼女に案内されて追いて行く。

 リビングらしいドアを開けて幼女は入って行った。


 中に入ると黒髪ロングの美少女が居た。


「お嬢ちゃんが、呪術師のアスト……ちゃん ?」

 由利凛が聞くと、


「そうじゃが、ワシの方が年上じゃぞ……! 」


 バチバチと火花がたっている気がする。

 正直、のじゃロリは由利凛で十分間に合っているんだが……


「変な黒猫に呼ばれて来たんだが……本当だったんだ 」

 由利凛と話しをさせるとこじれそうなので、俺が話しをすることにした。


「話しを聞いてやるのじゃ ! 」

 偉そうに無い胸を張る幼女……指摘するのは止めよう。

 コイツは由利凛と同じくらい面倒そうだ。


「自己紹介した方がよいか ? 」

 俺が聞くと、


「別にどちらでもよいのじゃ。

 どれだけ憎んでいるかを判ればよいのじゃ 」


「否、憎んでいる訳じゃ無いんだ。

 むしろ、ふたりを解放してやりたいんだよ 」


 俺は、これまでのいきさつを話した。

 こんな荒唐無稽な話しを真剣に聞くあたりは、闇に生きる呪術師だからだろう。


「ふむ、変わった依頼じゃが引き受けても良いぞ。

 ただし、二人分だから合わせて、二十年の寿命を貰うが良いかね、少年 」

 コチラを値踏みするような目付きで見てくる幼女。


「ああ、かまわない。

 俺の寿命の二十年を……「半分は妾が持つのじゃ ! 嵐お兄ちゃん、あまり妾たちを甘やかさなくても大丈夫なのじゃ !」


 その様子をニヤニヤしながら見ている幼女アスト


 悪趣味だな、コイツは。

 しかし、ダチこける、海里や妹たちを危険にさらすワケにはいかないからな。

 相手は古代中国の邪神 饕餮とうてつ

 女神だった時の明日菜アテナ英里香エリスならともかく、多少の力を持った人間には危険過ぎる相手だ。


「契約成立じゃな、少年……否、軍神アレスよ。

 噂と違い、ずいぶんと優しいじゃないか 」


 やはり、コイツは……


「妾とダブるから話し方を変えるのじゃ !

 妾のアイデンティティが目立たなく成ってしまうのじゃ !」


 もしかして悪魔か ?とも思ったが、聞かない方が良さそうだな。


「そうじゃ、それが正解じゃ!

『 好奇心猫を殺す』とも言うじゃろう。

 ふふふ。 噂ては宛になら無いモノだと解っただけでも収穫じゃな。

 もう、帰って良いぞ、軍神アレスと異世界の邪神ユリリンよ 」


 騒ぐ由利凛を抱えて、すぐにおいとました。

 ヤベェぞ、アイツ。

 神だった頃の俺たちでも敵対したく無い相手だぞ !


 世界は広い !


 ヤベェ奴が、ゴロゴロしていそうだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る