第299話 青春の幻影と不穏な影

【嵐side】


  部屋で落ち込んでいたら何処から聞きつけたのか、星華や秋穂、姫子までがやって来た。


  星華曰く『失恋にはヤケ食いが良い』とか。

  秋穂曰く『パッとカラオケでもして、忘れてしまうのが一番だ』とか。

  姫子曰く『初恋の女性は青春の幻影。

  蛍先生という名の嵐くんの思い出の中に残れば、それでいいと思うよ』なんて、何処かで聞いたセリフを言って慰めてくれた。


  うん、まあ……いつまでも、くよくよするのは俺らしく無いよな。

  気を取り直して四人で一緒に遊んでしまっていたら、由利凛が呆れたような目をして見ていた。

  手には、お好み焼き屋『火の車』のお好み焼きがあり、


「嵐お兄ちゃんの節操なし!」

 といい放ち、出て行ってしまった。

  ヘンな奴……。


  それを見ていた三人は微妙な顔をしながらも、その後も一緒に遊んでいたら由利凛のことなど、すっかり忘れてしまっていた。



 ◇◇◇◇◇


「邪魔するでー!」


 こけるのアホが勝手に部屋に入ってきた。


「なんで関西弁なんだよ……つーか何しに来たんだ? 

 お前が俺の見舞いに来たなんて冗談は言うなよ !」


「……」


「……」


「……」


 こけるは、ヤレヤレと肩をすくめて俺を憐れむように見ている。


「…な、なんだよ?」


「あのな、嵐。『邪魔するでー!』って言われたら『邪魔するなら帰ってんかー』って返すの。関西じゃ常識だぜ」


「ここは茨城なんだが」


「ところで『お願い』のことなんだけどさ…」


「会話のキャッチボールって知ってるか?」


 何時にもまして、こけるとの話しが噛み合わない。

 間に海里が入ることにより理由がわかった。


 また、于吉と左慈がろくでもないことを企んでいるらしい。

 潜入捜査をする為に俺の妹達の服を借りたいと言ってきた。


「で、その女性用の服は何に使うんだ?」


「もちろん変装だよ」


「それは女装って言うんだぞ !」


「性別まで偽れば、もう完璧に于吉たちを騙せると思うんだ !」


「完璧な不審人物として、警察まで敵に回しそうだな……」


「『心は女です』って言っときゃ大丈夫だよ」


「あらゆる方面を敵に回すのはやめれ !」


 アホだ、アホが居る。

 こけるは陰陽師としては優秀だと思うんだが、それ以外は凄く残念な奴だよな。


 チロリと海里を見ると、完全にあきらめた表情だった。


「ダメだぞ 」


「なんでやー !」


「妹達の服を勝手に貸すと俺が妹達に殺される。

 第一、サイズが合わないだろうが !」


 ガックリ来ている、こけるに海里が

「だから、言ったでしょう。

 普通、女の子が男の子に服を貸すわけ無いのに……」


「おおー、そうだ !」

 ナイスアイデアが浮かんだ。


「なんだ、なんだ。 この際だから、嵐のしょうもないアイデアでも聞くぞ !」


「由利子おばちゃん……由利子先生の服なら、どうだ !?

 由利子先生は、鍛えているから背も高いし細マッチョだから、たぶん こけるのサイズにも合うと思うぞ !」


「嫌だぁー ! 俺だって、命は惜しいんだぞ。

 あの並みの握力と腕力で、ボコボコにされてしまうわ !」


「ほぉ~、 ?」


「そんなもん、由利子先生に決まっ…………


 ガシッ !


 憐れ、こけるは由利子おばちゃんにアイアンクローをされていた。

 声が大きいんだよ、お前はこける


 こけるのせいで、俺まで一種に説教コースに入ってしまった。

 せっかく、星華たちと楽しく遊んでいたのによ !

 憂さ晴らしに、久しぶりに陰陽師の仕事を手伝ってやるかぁ~。



 ※作者より


 次回の更新は、12月1日を予定しています。

 現在、風邪😷を引いているので、心身ともに余裕がありません。

 風邪を治したら再び再開しますので、少しお待ちくださいね。


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