第297話 嵐とアザゼル、どちらが不幸 ?

【嵐side】


 ダルい、蝶子のクッキーダークマターを食ってからの記憶が無い。

 本当に悪気がなかったのか、蝶子からは泣きながら謝れてしまった。

 まだ本調子でない為に、家での自宅療養に成っている。

 昼のテレビは面白く無くて、Web小説コンテスト用の物語を練っていると、


「嵐、お友達がお見舞いに来たわよ 」


 母ちゃんから声がかかると同時に、こけるが入って来た。


「ヨッ! 拾い食いでもしたのか、嵐。

 最近は物騒だから、むやみやたらと怪しい食べ物を口に入れたらダメだぞ !」


「誰が拾い食いしたって !?

 もしかして、そんな噂に成っているのか ?」


いや、冗談だ。 蝶子ちゃんの手料理を食べて食中毒に成ったとしか聞いていないが……彼女の為とは云え命張っているな、おまえも」


「誰が彼女だ ! 俺は蛍が……蛍先生が好きなんだよ !」

 言ってしまった……だが後悔はしない !

 だけど、こけるは驚きも馬鹿にする様子もない。

 どちらかというと、憐れんでいるような……


「そうか、本当なら応援するところだが……

 俺も馬に蹴られたくは無いからな……スマナイ」


 ???

 俺が不思議そうな顔をしていますと、こけるはため息をしながら説明しだした。


「アザゼル先生と蛍先生がしたそうだ。

 二人が学園長に挨拶をしに行ったのを見た生徒が居る。

 未確認情報だ…………嵐、アラシ、聞いているのか !」


 OH MY GOD! 神よ、何故 俺を見放した !

 俺がショックで頭を抱えていると、


「嵐くん。 まだ噂の段階だから、あきらめるのは早いよ。

 最後まで、あきらめたら そこで試合終了だよ ! 」

 こけるの後ろには海里と姫子が居た。

 普段、おとなしい姫子が叱咤激励してくれたのだ !


 俺は急いで上着を着て学園に向けて走っていた。

 この時間なら、蛍は学園に居るはずだ !

 病み上がりのせいか、息が苦しい。

 ゼイゼイと息を切らしながら、ようやく学園に着くと、真っ直ぐに職員室に向かった。





 ガラガラ ガラガラ ガラガラ


 職員室のドアを開けるが、いつもの席に蛍の姿か見えない。

 キョロキョロと探していたら、由利子おばちゃんと目が合ってしまった。


 ゲッ ! 俺のことをにらんで、手でコッチに来いとハンドサインをしている。

 今から由利子おばちゃんの説教を聞いていたら、日が暮れてしまうよ !


 後から怒られることを覚悟して、この場を離れることにした。


「コラ、嵐 ……何処に行……


 後ろから声が聞こえてきたが、振り切るように走りだす。


 すると、蛍とアザゼルが此方こちらに向かって歩いてくるの…………!?


 蛍とアザゼルが手を繋いでいるだと !

 アザゼルが蛍を気遣うようにリードして蛍が恥ずかしそうにしながらほほを染めている。


 そんな……嘘だ !

 いくらなんでも学校で、イチャイチャするなんて……

 思わず、自分の頬をツネルと…………痛い、痛いだと !


 気がついたら、外に向かって走り出していた……





 ◇◇◇◇◇


【アザゼルside】


「蛍先生。 もうすぐ、職員室に着くので頑張ってください 」


「アザゼル先生、ありがとうございます。

 職員室に着いたら予備の眼鏡があるので、 もう少しだけお願いしますね 」


 蛍先生ガブリエルが、コンタクトレンズを落としてしまい目が見えないので、俺が職員室まで補助しているんだが……


 蛍先生に気を取られていたせいか、職員室の前あたりに人の気配がしたから見上げてみると、すでに誰かが立ち去った後だった。

 まあ、騒ぎに成って無いから、たいしたことでは無いのだろう。



 蛍先生と職員室に入ると、由利子先生が睨んでいた。


「ちょっ ! サボっていたワケじゃ無いですよ、由利子先生 !

 蛍先生が、コンタクトレンズを失くしたから職員室まで案内していただけですよ。

 本当です、信じてくださいよぉ~ 」


 誤解が解けたのか、由利子先生の目から殺気が消えた。

 ヤレヤレ、ほんと、俺って不幸体質だよな。

 堕天使で悪魔だから神に祈りはしないが、誰かに呪われていれのかな、俺。


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