第296話 最後まで、あきらめたら そこで試合終了だよ ! 後編

明日菜女神アテナside】


「ナメられたものね、わたし達も !」

 英里香女神エリスが、イラつくように言い捨てた。


 先ほど来た、病院の事務員。

 だけど、あきらかに不自然な対応だったので、ゴッド・アイ鑑定したら、于吉腹黒メガネだった。

 無理も無いでしょう。

 于吉はわたし達を普通の女の子だと思っているのでしょうから。


アイツ于吉、呪われているわね。

 いい気味だわ、仮にも『神』と名のつくものを悪用しようとした罰ね !」


 英里香ったら、しょうがない娘ねぇ~。


「アノ呪いは、古代中国の邪神よね。

 四凶とか言っていたわ」


 英里香の見立ては有っていると思う。

渾沌 こんとん窮奇 きゅうき檮杌 とうこつ饕餮 とうてつの四柱ね。

 確か、前に饕餮を悪用していたから侵食されたのでしょう」


「事情は理解したから、いい加減、土下座を止めなさい !

 知らない人が見たら、誤解するでしょう !」

 英里香が青筋を立てながら怒っている。


 突然、現れた妹神であるへーべー青春の女神とヘラクレスがジャンピング土下座をしてきたからだろう。

 いったい、何処で覚えて来るのでしょうね、この二人は。


「で !? アンタヘラクレスが居ながら、導師とは云え人間におくれを取るなんて、自慢の筋肉が泣くわよ、英雄神様 !」


 ヘラクレスのことが嫌いなのか、グチグチと嫌みを言う英里香不和と争いの女神


「スマナイ、義姉さん女神エリス

 限定バナナ味のプロテインの安売りが有ったので、へーべーに人間二人を任せた私の責任だ !

 責めるなら、私だけにして欲しい」


「旦那さま…………ステキ💕」


 それを見た英里香は、ゲシゲシとヘラクレスを蹴るが……


「イッ 痛ったったったったった !」


 ダメージを負ったのは英里香だった。

 鋼の筋肉筋肉ダルマを持つと言われる英雄神ヘラクレスなんだから、良く考えればいいのに。


 テポ テポ テポ テポ


 ユリリン由利凛嵐お兄さま軍神アレスの部屋から戻ってきた。


「一応、嵐お兄ちゃんは無事なのじゃ !

 ただ、蝶子ちゃんアフロディーテクッキーダークマターを食べたせいで疲弊しているだけなのじゃ !」


「そう…………とりあえずは良かったわ 」

 なんだかんだ、嵐お兄さま軍神アレスを慕っている英里香女神エリス


「今、目覚め無いのは、衰弱している時にされたせいで、魂の一部が異世界に行ってしまったせいなのじゃ。

 きっかけさえあれば、目覚めるはずなのじゃ」


 由利凛の話しを聞いた英里香の目が、スゥーと細間った。

 アッ ! 本気で怒っているわ、英里香女神エリス


「へぇ~、何処のバカが嵐お兄さま軍神アレスを召喚したのかしら ?

 きっちり、お仕置きしないとね…………ウフッフッ !」


「それが異世界の人間じゃ無くて、異世界の女神らしいのじゃ !

 お義母様女神ヘラにメールして聞いたから、間違いないのじゃ !」


 あらあら、日本人が異世界召喚拉致のターゲットにされやすいとは云え、わたし達の異世界召喚拉致するなんて、是非とも挨拶に行かなくてはお礼参りしなくては駄目ね。



 ◇◇◇


 ICU集中治療室に行くと、嵐お兄さまが様々な機械に繋がれて眠っていた。


「胃の洗浄が早めに行われたので、命の危険性は大丈夫らしいけど、ショックで昏睡状態が続いているそうだ。

『目覚めるのは、明日かも知れないし10年後かも知れない』と医者が言っていた。

 今の俺たちは脆弱ぜいじゃくな人間であって、神とは違うから仕方ないとは云え……

 情けないぞ、アレス !」


 ヘパイストスお兄さまが悔しそうに呟いていた。


 いつの間にか、由利凛が嵐お兄さまの耳に、


「今晩はスキヤキなのじゃ !

 いつまでも寝ている嵐お兄ちゃんには、を沢山プレゼントしてあげるのじゃ !

 A5ランクの和牛は、妾たちが嵐お兄ちゃんの代わりに食べてあげるのじゃ !」


「しいたけ !椎茸は嫌だぁぁぁー ! 俺にもを喰わせろぉぉぉー !」


 突如とつじょ、ムクリと起き上がる嵐お兄さま。

 どれだけ食いしん坊なんですか !

 心配するだけ損をしましたね。


 これは、英里香女神エリスと一緒に異世界の女神とやらに…………フッフフ、あら嫌だわ。

 どうやら、わたしもだいぶブラコンに成りかけているわね。


 とりあえず、嵐お兄さまの無事は確認出来たから、まずは腹黒メガネ于吉たちの動向に気をつけることにしましょう。

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