第288話 命短し恋せよ乙女 ⑭

【由利凛side】


 佐江内姫子を背負いながら歩いている嵐お兄ちゃんを見ながら、妾はあきれていたのじゃ。


 星華ちゃんに秋穂ちゃん、伊緖ちゃんに由美子ちゃん。

 おまけに蝶子ちゃんアフロディーテが嵐お兄ちゃんを中心に歩いている。

 妾が男の子だったのなら、

『ケッ ! とんだハーレム野郎だぜ !』

 と揶揄していることじゃろう。

 ただ、妾は心優しいスーパーヒロインだから、生温かい目で見守ってあげるのじゃ。


「ユリリン。 その目、気持ち悪いよ。

 嵐お兄ちゃん達を呪っているの ?」


 双子の姉である、エリリン恵利凛が失礼なことを言ってきた。


「失礼な ! 妾は、嵐お兄ちゃん達を見守っているだけなのじゃ !」


「そ~お。 邪神が悪巧みをして、ほくそ笑みを浮かべている顔にしか見えなかったんだけど、わたしの気のせいかな ?」


「酷いのじゃ ! エリリンが、双子の可愛いカワイイ妹を信じてくれないなんて、グレてやるのじゃ !」


「わたしもグレる !?

 最近、アテナ明日菜が冷たい !

 エリス英里香とばかり遊んでいる 」


 何故か、パラスちゃんまで妾と一緒に『グレる !』宣言をしてきたのじゃ。

 案の定、エリリンは困っている。

 エリリンは真面目過ぎるのじゃ !

 少しは妾を見習って、人生を楽しめば良いのに。


 妾とパラスちゃんが駄々をねていると、眉をハの字にして困っているエリリン。


「なら、蝶子ちゃんわたしは先にゴールに行って、先生に連絡するね !」


 蝶子ちゃんが、嵐お兄ちゃん達を置いて先行を始めた。

 駆け足では無く競歩のように、早歩きで前に進んでいく。

 お花畑頭のアフロディーテと違い、なかなかしたたかな蝶子ちゃんなのじゃ。


「蝶子ちゃんだけじゃ心配だから、わたしも行くね !」


 エリリン恵理凛アフロディーテ蝶子ちゃんを追いかけて行くもののコンパス歩幅、足の長さが違うから、アッと言う間に引き離されて…………


「早いよぉ~、蝶子ちゃん !」


 息を切らして、へたり込む恵理凛。

 只野真亜頭ただの マーズが、


「恵理凛ちゃん、大丈夫 ? 」

「うん、大丈夫だよ。 マーズくん 」


 場所を考えて欲しいのじゃが仕方ないのう~。

 最近、お友達から恋人同士に進化したのだから、イチャイチャくらい許してやるのじゃ。


「由利凛ちゃん。 疲れたら、少し休もうか ?」


 辺奈凪へんな なぎが心配そうに妾を覗きこむ。


「大丈夫じゃ無いのじゃ、凪。 膝枕して欲しいのじゃ !」


 妾が甘えると、顔を真っ赤にしている凪は可愛いのじゃ。

 妾と凪も正式に恋人同士に成った。


 だから余裕綽々で、嵐お兄ちゃん達の恋模様を高みの見物が出来るのじゃ。


「エリリンも、ユリリンも楽しそう……

 アテナあすなエリス英里香とばかり遊ぶなら、わたしも彼氏を作ろうかな ?」


 パラスちゃん女神パラスが、ようやく明日菜ちゃん女神アテナ以外に目が行った発言をすると、ワラワラと男子生徒が群がってきた。


 菖蒲学園に居る留学生たちが、自己アピールを始めたのじゃ。


「ソレント=エーゲカイです、パラス様 !」

「イオ=グリーンランドです、パラス様 !」

「アイザック=アルクだ 」


 三人の男の子に囲まれて、目を白黒させるパラスちゃん。

 実は大江戸三姉妹の中では一番人気なのは、公然の秘密だったりするのじゃ。


 それを見ていた、明日菜ちゃんも英里香ちゃんも驚いている。

 二人とも余裕をブッコイていると、アッと言う間に行き遅れに成るのを知ろうとしてないのじゃ。


 さてさて、妾は高みの見物をして楽しもうかのう~。


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