第287話 秋の強歩大会 後編
【蝶子side】
「嵐お兄さまぁー 、佐江内さんが足を
明日菜ちゃんの声がした方を見ると姫子ちゃんが辛そうに足を引きずっていた。
嵐くんが、すぐに姫子ちゃんの元に近寄って、しゃがむと……
「大丈夫か、姫子 !
俺がゴールまで運んでやるから、背中におぶされ !」
姫子ちゃんの顔が真っ赤に成っている。
こういうことを、サラリとするから、ライバルが増えていくのよね。
顔が真っ赤なのは恥ずかしいだけじゃ無いのは、英里香ちゃんが姫子ちゃんの足を擦ると顔をしかめる様子からも分かるんだけど……うらやましいぞ、姫子ちゃん !
普段が真面目な姫子ちゃんだからこそ、星華ちゃんも秋穂ちゃんも黙っているんだろうな。
わたしは作戦を変えた。
嵐くんは、
例え、主導権争いで勝っても、嵐くん本人に嫌われてしまえば、元も子もないからだ。
それは、星華ちゃんや秋穂ちゃんも同じ考えだったようで……
「二人のリュックは、わたし達が持つよ 」
「うん うん、だから安心してね 」
星華ちゃんが嵐くんのリュックを、秋穂ちゃんが姫子ちゃんのリュックを持っている。
リュックの中身は、お弁当と水筒、タオルくらいだから、そんなに重く無いはず。
出遅れたことに気がついた伊緖ちゃんと由美子ちゃんが姫子ちゃんの側に行き励ましていた。
わたし? わたし こと 蝶子は、
「なら、
強歩大会では、スマホを持つことが禁止されているので、連絡手段が限られているのよね。
先生達は進路上のアチコチに居るんだけど、 たぶん ここから近いのは、ゴールに居る先生のハズ !
すでに、強歩大会の脱落者がいるから、他の先生達は脱落した生徒に寄り添っているハズよね。
ちなみに、由利子先生と数人の先生は、強歩大会をサボりそうな生徒をマークしているようだ。
ハァ ハァ ハァ、 荷物が無いとは云え、結構キツいなぁ~。
ゴールが見えてくると、蛍先生が居た。
わたしの様子が、何時もと違うことに気がついた蛍先生が駆け寄ってきたので、事情を話すと直ぐにスマホで連絡してくれた。
おそらく、救護所に連絡したのだろう。
へたり込んで座っていた、わたしに……
「お疲れ様、夜野さん。
偉かったわね 」
冷たいミネラルウォーターとタオルを渡してくれた。
しっかり、水分補給しながら汗を拭いていた わたしは、もう一つの目的を果たすことにした。
わたしより先にゴールしている生徒たちは、離れた所で思い思いにおしゃべりしているから、わたしと蛍先生の話しは聞こえ無いハズ。
「蛍先生。 蛍先生はアザゼル先生とお付き合いしているんですか ?
それとも、嵐くんに好意を持っているの、蛍先生 ?」
ストレートに聞いてみた。
蛍先生の性格なら、これでいいハズ。
蛍先生は少し考えながら、
「アザゼル先生とは、まだお付き合いをしていないけど、わたしがアザゼル先生に惹かれているのは本当よ。
まだ、
嵐くんに関しては好意があるけど、弟みたいに思っているだけだから、安心していいわよ 」
よっし ! 言質は取ったわ。
最大のライバルが消えたから、後は…………蝶子ちゃんのライバルに成りそうな娘は、姫子ちゃんだけね。
ウフフ、絶対に負けないんだからね !
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