第286話 秋の強歩大会 前編
── 納豆県 とあるゴルフ場外苑部 ──
【
今日、ここで
ちょっとした小高い丘にあるゴルフ場の外苑部を登ったり下ったりするこの行事、運動不足の生徒には、かなりキツいイベントだったりするのです。
「嵐く~ん。 わたし疲れちゃったぁ~
引っ張ってぇ~、後ろから押してぇ~ 」
蝶子さんが嵐くんに、ピトッ と腕に
「嵐くんも蝶子さんも
塩分補給も大事ですよ 」
「ありがとう、姫子」「ありがとう、姫子ちゃん」
ショピングセンターや文化祭を通じて仲良く成った夜野さんから、お互いに名前呼びをすることを提案された。
だから、『蝶子さん』『姫子ちゃん』とお互いに呼びあうように成った。
「嵐くん !
特性ドリンク作ってきたよ !
リュックに入れとくね 」
「嵐くん、汗を拭かないと風邪をひくよ。
スポーツタオルを持って来たから使って !」
タイミングを失った、
嵐くんは、クラスと云うより学園全体で人気がある男の子。
菖蒲学園イケメン四天王の一人で、四天王最弱と言われているけど、その気さくさから人気が一番ある男の子。
ロッキー=アスガルド君は、強歩大会の賞品の一つである幻のラーメン屋『大魔王ラーメン』のラーメンセット券をゲットする為に、遥か先に進んでいる。
四天王で一番のイケメンだと女の子たちは噂をしていたけど、大江戸ファミリー以外には塩対応の為にアタックする女の子は少ない。
わたしは…………わたしは遠くから見ているだけでいい。
嵐くん達、大江戸ファミリーと同じクラスに成ってから、教室の雰囲気が凄く良いせいか、友達が沢山出来た。
中等部の時は、大江戸ファミリーとは別のクラスだったせいもあり、スクールカーストの底辺に居た、わたしは何時もボッチだった。
だから、カースト最上位に居る大江戸ファミリーは手の届かないスターだと思っていたのに、高等部で同じクラスに成ってみたら、驚くほどに大江戸ファミリーはフレンドリーで優しく仲良くしてくれた。
クラスのリーダー格の大江戸ファミリーに逆らう人もいなかったから、今のクラスは本当に仲良しクラスに成っている。
グキッ !
余所見をしていたら、石に
「大丈夫、佐江内さん !」
わたしが無理な体勢に成り、足を引きずったのを見た大江戸明日菜さんと大江戸英里香さんが駆け寄ってきた。
「う~ん。 これは、
英里香さんが、わたしの足首を見ながら
「嵐お兄さまぁー 、佐江内さんが足を
ええーっ ! そんな、嵐くんに悪いわ。
わたしが躊躇していると英里香さんが、
「遠慮はいらないわよ。
体力だけはあるからね、嵐お兄さまは ! 」
嵐くんが、すぐに近寄って来てシャガミながら、
「大丈夫か、姫子 !
俺がゴールまで運んでやるから、背中におぶされ !」
嵐くんの優しい気持ちは、ありがたいけど 嵐くんに想いを寄せる女の子たちの視線が痛かった……
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