第280話 命短し恋せよ乙女 ⑬

【嵐side】


 姫子に励まされて、アザゼルの住むアパートに来ているけど…………


「何で、おまえ達まで来るんだ、妹たちよ !」


 明日菜に英里香、パラスに由利凛、恵利凛までもが出歯が目をしている。


「もちろん、嵐お兄ちゃんが心配だから一緒に来て見守ろうと思ったのじゃ!」


 嘘おこけー(うそをいうな) !

 コイツら好奇心で見に来ているだけだろう。

 ゴッドイヤー地獄耳を使ってもアパートの部屋の声までは聞こえてこないのがもどかしい。

 信じているぞ、蛍 !

 アザゼルなんかと一線を越えて無いことを !


 ガチャリ


 アパートのドアが開き蛍とアザゼルが出てきた。

 二人、仲が良さそうにしているのが悔しい。

 途中まで送ろうとしたアザゼルを蛍が制して、二人は別々に別れた。

 アパートの部屋に帰るアザゼル。

 自分の家に帰る蛍。


 少しだけ、ホッとした。

 帰りに別れのキスなんてされたら立ち直れ無いからな。


「ダメですね、アザゼルは。

 ここは、相手の家の前まで送ってあげないと、ジェントルマンではないですね」


「 無理よ、明日菜。 アザゼルに女心なんて理解できるワケ無いでしょう。

 蛍先生も物好きね、本当に」


「明日菜ちゃんも英里香ちゃんも容赦無いのじゃ !

 アザゼル先生が甲斐かいしょ無しなのは知っているでしょう。

 きっと、ダメダメだから聖書の神に見放されたに違いないのじゃ !」


 容赦無いのは、お前だよ !


「おう おう、言ってくれるねぇ~、異世界の邪神は !

 流石にお兄さんも傷つくんだけどねぇ~ 」


 いつの間にか、アザゼルが俺たちの後ろに居た。


「妾は正直な美少女女神だから、嘘は言って無いのじゃ……悪魔の !」


 ユリリンの奴、挑発してやがる。


「本当に、いい性格してやがるぜ !

 それはそうと、軍神ちゃんに頼みがあるんだが ?」


「借金なら頼む相手を間違えているのじゃ !

 妾だったら、カラス金で1割で良いのじゃ 」


たけえよ高いよ、何処のヤミ金だよ !

 異世界の邪神は悪魔からも取り立てる気か!」


 話しが、ちっとも進まないんだが……


「それで、何の用なのよ !

 言っとくけど、私たちギリシャ神話の神々にケンカを売るなら覚悟しなさいね !」


 英里香邪神エリスが目をギラギラさせていやがる。

 人間に成ってから暴れていないから、ストレスでも溜まっているのだろうか ?


「オオーッ、恐い恐い ! 考えてみれば、軍神ちゃんの妹神たちは闘いの女神ばかりなのを忘れていたぜ!」


 そう言っているわりには余裕綽々としているよな。

 まあ、アテナもエリスも人間に転生してからは、だいぶ丸くは成っているんだよな…………禁句を言わなければ。


「本題にはいるぜ ! 軍神アレス 否 大江戸嵐。

 お前さんが本気なら、蛍先生との橋渡しの手伝いくらいしてやるぜ! どうする?」


 何を企んでいる、アザゼル悪魔


「対価は ? あんた達悪魔が善意で助けてくれる訳では無いでしょう?」


 英里香エリスが慎重に聞いている。

 単純な明日菜アテナと違い、駆け引きには一日の長があるからな。


「フフン。 話しが早くて助かるぜ!

 俺と軍神ちゃんの仲だから、サービスして 鳳凰ビールの缶ビール一年分で手を打ってやるぞ ! 」


「高い ! 実質、飲み放題じゃないの !

 缶ビール30本入り3箱で手を打ちなさい !」


「安っ ! せめて、1月に1箱で12箱はくれよ !」


「 なら、5箱 !」「10箱 !」「6箱、これ以上は出さないわよ !」


「くぅぅぅぅ、女神も天使も女って奴は…………」


 本人、そっちのけで交渉が成立してしまった。

 アザゼル悪魔の手なんて借りたく無いが、背に腹はかえられないから我慢するしかないのだろうか……







 ※カラス金(鴉金、烏金、からすがね、からすきん)は、一昼夜を期限として高利で金を貸す業者のことである。


 利率は1日に2,3パーセントから1割と高金利で、借り入れた翌日の早朝までに利息と元金を返済する決まりだった。


 名前の由来は夕方にカラスがカァと鳴けば利子が付くこと、あるいは明け方にカラスがカァと鳴くまでに返済することという説もある。


 Wikipediaより抜粋


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る