第278話 命短し恋せよ乙女 ⑪

【蝶子side】



 勝ったぁー !


 佐江内に勝ったわ !


 わたしと嵐くんは一緒に同じ道を歩いていくんだからね。

 大江戸姉妹や潮来姉妹が胡乱うろんな目で見てくるけど、気にしないわ !

 陰陽師なんて危険で得体の知れない職業より、ずっとマシなんだからね。


「蝶子、俺は陰陽師に……「 嵐くん。 陰陽師には試験があるのよ ! 今の嵐くんには無理だと思うなぁ~ 」


「いや、だって、こけるの奴が受かるくらいなら、俺だって陰陽師に成れるハズだろう ! 」


 嵐くんは抵抗するけど、


「普段、オチャラケているけど、こける君は凄い人だよ。

 きちんと、プライベートと仕事モードを使い分けているわ。

 仕事モードのこける君。

 嵐くんは勝てると思えるのかな ?」


 わたしの中に居る、オバサンアフロディーテも凄く警戒している。

 こける君の中に眠る存在を起こしてしまわないようにと !


「なんだ、なんだ、俺の噂をしているみたいだけど、美少女から伝言でも頼まれたのか ? 」


 こける君と海里ちゃんが一緒に来た。

 この二人、お互いに憎からず想い合っているのに、なかなか付き合わないのよね。

 女子生徒は海里ちゃんを応援しているんだけど、当のこける君がニブチンなのが問題なの。

『 何処のラブコメ主人公なのよ !』

 と、云うのがわたし達の共通認識だ。


「そうだ ! こける、蝶子ならどうだ ?

 見てくれだけなら、美少女でスタイルも良いぞ! 」


 って、どういうことよ !

 蝶子ちゃんは中身だってすごいんだからね。


「蝶子ちゃん ? 蝶子ちゃんかぁ~。

 俺は友達の彼女に手を出す程、ヤボじゃ無いんだがな。

 嵐、蝶子ちゃんとケンカしたなら、謝れ !

 カップルのケンカは、たいてい男が悪いと相場が決まっているんだ !」


 わたし達、女子生徒は心の中で拍手した。

 実際、こける君のファンも多いけど、彼の突拍子の無い行動と陰陽師と云う悪霊などと闘う話しに線を引いて見守っている状態なのよね。

 こける君に付き合えるのは、海里ちゃんみたいに一緒に悪霊と闘える女の子でないと、彼の足を引っ張ってしまう。

 まあ、悪霊好きな女の子がいないのも原因なんだけど。



「誤解だぁぁぁ ! 俺と蝶子は付き合っていないし、俺は蛍……竜ヶ崎蛍先生が好きなんだよ !」


 やっぱり、あきらめていなかったかぁ~。

 でも、当の蛍先生は……


「アレ、知らなかったのか、嵐 !

 最近の蛍先生は、アザゼル先生のアパートに通い妻をしていると噂だぞ ! 」


「…………嘘だぁぁぁぁぁぁ ! 嘘だと言ってくれ !」


 嵐くんが、周りをぐるりと見回すけど、誰も否定はしなかった。


「だから、言ったでしょう、嵐お兄ちゃん !

『行動しないで、成果を求めても結果は出ないよ』

 ってね。

 蛍先生は、ダメンズだったのじゃ !

 ちょいワル親父を気取っているダメ親父のアザゼル先生のことが、ほっとけなかったのじゃ !

 だから、スッパリあきらめることを、おすすめするのじゃ !」


 由利凛ちゃん、ナイスアシスト !

 オバサンアフロディーテの言うことなんて、あてにはならないわね !


 これからは、ずっと蝶子ちゃんのターンなんだから !


 ガックリ落ち込んでいる嵐くんに優しくして、わたしに傾かせようとしたら……


「嵐くん。 あきらめたら、ゲームセットですよ。

 安西先生も言っているじゃないですか ! 」


 佐江内が嵐くんを慰めていた !


 余計なことを ! そこは、わたしの立ち位置よ !

 ぐるぐると考えが頭の中で駆け巡る。


「姫子……ありがとう。 おかげで元気が出たよ 」


「どういたしまして、嵐くん。

 わたし、応援していますから 」


 いつの間に、名前で呼び合うようになったのよ !


 おのれ、佐江内 ! 油断できない奴だわ !


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