第277話 命短し恋せよ乙女 ⑩

佐江内姫子さえない ひめこside】


 ガラ ガラ ガラ ガラ !


「やっぱり、ダメだったのじゃ !

 あのバーコードハゲ、最初から妾の話しを聞く気はなかったのじゃ 」


 由利凛ちゃん、潮来さんが教頭室から帰ってきた。

 嵐くんに頼まれて、文化祭の責任者である教頭先生に許可をもらいに行っていたの。

 天真爛漫てんしんらんまんな嵐くんは、教頭先生たちの派閥に嫌われている。

 大江戸家や潮来家は、理事長・校長派だから仕方がないのかも知れないけど……


「ユリリン、あんたのことだから、んでしょう 」


 英里香さんが言うと、由利凛ちゃんは ニヤリと笑いながら、


「妾が、ただでは起きないのも、当たりマエダのクラッカーなのじゃ !!」


「だから、おまえのギャグは古いを通りすぎて、死語なんだよ !

 今のナウい若者には通じないだろうが !!」


 由利凛ちゃんと嵐くんのじゃれ合いが始まった。

 二人は幼馴染みと云うより兄妹みたいだ。


「で、成果は ?」


 英里香さんは、嵐くんの妹と思えないくらい冷静沈着な娘だ。


「必要経費を引いた儲け、四公六民。

 今の増税メガネより良心的な数字なのじゃ !」


「へぇー、あのばら撒きメガネが、よく其処までゆずったわね。

 寄付金と云うことで、

『必要経費を含めて全額 寄付しろ !』

 と言っていたのにね 」


「寄付金と言っても決算報告書を出さないから、何処に寄付をしているか、確かめようが無いわ 」


 由利凛ちゃん、英里香さん、明日菜さん、皆さん美少女なのに口からは毒舌が溢れている。


 アッ、そうだ !


「皆さん。 昨日は助けて頂き、ありがとうございました。

 本当に助かりました 」


 三人は目を丸くした後に少し恥ずかしそうにしながら、


「わたし達、クラスメイトで友達でしょう。

 助けるのは当然だわ 」


 明日菜さんが笑顔で応えてくれた。

 まるで、女神さまのような美少女だわ。

 ウチのクラスは、担任の由利子先生を含めて美男美女が揃っている。

 その辺のアイドルが裸足で逃げ出す程に……

 噂だと大江戸三姉妹も潮来三姉妹も東京のエクスプロージョン事務所から来たスカウトを断ったと聞いている。


『アイドルより、やりたい目標があるから 』


 と云うのが理由らしい。

 わたしなどは、進路を何も決めていないというのに、皆さん凄いなぁ~。


「明日菜か英里香なら、全額 俺らのモノに成ったんじゃないのか ?」


 嵐くんが不思議そうに聞くと、


「明日菜ちゃんや英里香ちゃんが交渉したら、嵐お兄ちゃんの言う通りに成っただろうけど、変わりに大江戸グループの幹部の末席を要求していたハズなのじゃ。

 あのハゲ茶坊主は、コネで教頭に成れた無能だから、校長にも成れず、教育委員会にも滑り込めない落ちこぼれなんだからね 」


 えっ、遠慮がないなぁ~。


「わたしと嵐くんは、幼稚園の先生を希望しているけど、佐江内さんは進路が決まっているの ?」


 夜野さんや嵐くんまで、進路を決めているなんて !


 まだ、高一なのに、わたしだけ置いてきぼりで恥ずかしい。


 夜野さんは、芸能界かモデルに成ると思っていたから、なおさらショックだった。


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