第275話 命短し恋せよ乙女 ⑧

【蝶子side】


 メキシコ料理のお店が混んできたので、喫茶店に入った。


「決戦……結構、歩き回ったわね 」


「はい」


 なかなか侮れないわね、佐江内。


 ここで、勝負よ !


「佐江内さん。 恋愛相談に乗ってもらってもいいかな ?」


「れっ 恋愛相談 !?

 わたしでは、荷が重いというか、人選ミスで……「友達の話しなんだけどね 」


 逃がさないわよ !


「クラスで人気のある男の子を好きになっちゃったんだって。

 その男の子、皆に気さくだから、友達は脈があるのか、わからないから悩んでいるらしいの。

 頑張って、アタックした方が良いと思う ? 」


 気付きなさいよね。 友達が、わたしってことくらいは !


「脈とかは、わからないんですけど、自分が特別じゃないって、わかっていても好きになっちゃう気持ちは、わかる気がします……

 ごめんなさい、ぜんぜん相談に乗れてないですよね 」


 佐江内は、お花摘みトイレに行くのに席をたった。


 予想外の反応ね。

 わたしの意図に気がついていないのかしら ?

 こうなったら、プランBだわ !


 ─ わたしの好きな人は嵐くんだって言おうわたしの狙っている男に手を出すなよ、公約


 戻ったわ…………誰 ?


「偶然、いや運命だね、夜野さん。

 良かったら、一緒に遊ばない ? 」


 また、ナンパ男か、めんどくさいなぁ~


「ごめんなさい。

 今、友達といるんで 」


「へえ、友達もいるんだ !

 じゃあ、皆で遊ぼうよ。 こっちも二人だし 」


 この手の男って、払っても払っても付きまとってきて、本当にハエみたいで鬱陶うっとうしいわ。


「黙ってないでさ、ほら !」


 ハエの分際ぶんざいで、わたしの手を触らないでよ !



 ◇◇◇◇◇


佐江内姫子さえない ひめこside】



「ちょっと……あの、困ります !」


 トイレから戻ってくると、夜野さんが男の人に手をにぎられていた。

 ナンパって、本当にあるんだ……じゃなくて !


 夜野さんが困っている !

 どうしよう、店員さんが見つからない……


「行こう !」


 夜野さんが強引に連れて行かれてしまう……


「待ってください !」


 勇気を振り絞って声をかけた。

 男の人は振り返り、


「なんだよ、連れの娘はブスじゃん !

 君は来なくていいよ」「たしかに~ハッ ハッ ハッ 」


 強引に夜野さんを連れて行こうとする男の人が、


「じゃあね、ブスちゃん 」


 気がついたら、わたしは夜野さんと男の人たちの間に割り込んでいた。


「すみません、すみません !

 連れていかないでください。

 この娘は、友達なんです 」


 怖かった。 自分でも、行動出来たのに驚いていた。


「てめえ、ブスのクセに !

 こっちが、下出に出たからって逆らうとは、痛い目にあいたいらしいなぁー ! 」


 男の人が手を上げて殴ろうと……


「邪神ちゃん・イナズマキックなのじゃ !」


 ドンッ ! と云う音と共に男の人が吹き飛んだ。


 ムクリと起き上がった男の人はにらんでいた、由利凛ちゃんを !


「そこまでよ ! あなた達、隣のクラスの……瀬久原せくはら羽和原ぱわはらよね !

 学園に報告されたくなかったたら、立ち去りなさい !」


 大江戸英里香さんまでがいる。

 その隣には、明日菜さんにパラスさんまで……


「ちっ、冷めたわ ! 行こうぜ 」


 男の人たちは立ち去り、大江戸姉妹と潮来姉妹も『用があるから……』と言って立ち去ってしまった。


「良かったぁ~ !」


 、クラスメイトが居て助かったわ。


「佐江内さん。 あの……ありがとう」


 夜野さんがお礼を言ってきたので、あわてて…


「いえ、そんな大したことは……

 ナンパって、本当にあるんですね。

 今のうちに帰りましょうか 」



 駅から出ると、


「それじゃぁ、わたしはアッチなので、また遊……」


 また遊びましょうなんて、迷惑かな ?

 さっきも勢いで、友達だと言ってしまったし……


「佐江内さん。 また遊ぼうね 」


「ええーっ !」


「ダメかなぁ~ ?」


「いえっ、あの、また是非お願いします !」



 夕日に照らされている夜野さんは綺麗だった。

 わたし、友達と認められたのかな ?


 嬉しいな、友達が出来て !


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