第274話 命短し恋せよ乙女 ⑦

【蝶子side】


 覚悟しなさいよ、佐江内 !


「これ勝った……買ったら、別のお店に行きましょう 」


「はい」


 ゲームの配信で儲けたお金があるから、女子力の差を見せつけてあげるわ !


 M○VEのクーポンもゲットしてあるから、佐江内に恩を売って感謝してもらえれば、イジメにはならないわよね。


「佐江内さん。 まずは、『NORAKUROノラクロ』に行きましょう。

 リーズナブルに安いしには、ぴったりよ 」


 嵐くんとデートするのは、わたしだけどね!


 NORAKUROくらいなら知っているわよね。


「あのう~、わたし、『しま◇ら』で何時も買っているので、NORAKUROは入ったことが無いんです 」


 ……なんだ、やっぱり、わたしの方がお洒落じゃない !


「大丈夫、大丈夫だから !」


 入り口で躊躇ちゅうちょしている佐江内の手を引いて無理矢理、店内に連れて行った。


「結構、可愛いものがあるから好きなの~♪」


 わたし達の姿を見た店員が、


「お客様、こちらの商品を試着なさいますか ?」


「いや、あの……」


 焦っている、あせっている ♪


「試着 ? いってらっしゃい~ ♪」


「こちらへ、どうぞ 」


 店員に試着室まで連れられていく佐江内。

 彼女の選んだ服を持って、わたしも試着室に向かった。





「佐江内さ~ん。 着れた~♪

 わたしも気に入ったから、同じの着ちゃったぁ~ ♪」


 同じ服を着て、わたしの方が似合っているのを見せつけてやるわ !


 しかし、……


「あれ、まだ着てないの ?」


 佐江内は、着替えないで元の服で試着室から出てきた。


「着たんです ! 着たんですけど、ちょっと違うかなぁ~ と !

 それに今月は、お小遣いがピンチなので、やめておきます 」


 ちっ、上手いこと勝負を逃げられたわ !


 こうなったら、佐江内のフィールドで勝負してやるわ !


「佐江内さんは、普段どういうお店に入るのかなぁ~ ?

 そこに行こうよ 」


 お洒落なところしか行かないわよ !


 連れて行かれたのは、フードコーナー。


 えっ、えっ、佐江内のクセにお洒落な店じゃないの !


 ちょうど、ランチタイムだったらしく、わたし達 学生のお小遣いでも大丈夫な値段だわ。


「トルティーヤにレタス、タコミート、サワークリーム、サルサは ? 」


「たっぷりとお願い !」


 サルサが何か知らないけど、悔しいから聞けないわ。

 飲み物は、佐江内がジンジャーエール。

 わたしはオレンジジュースにした。


 くっ、メキシコ料理なんて、完全に想定外よ !

 佐江内のクセに生意気 !

 タコスが美味しいから、なおさら腹がたつ。


「夜野さん。 他にも頼みますか ? 」


 自分のフィールドだからって、わたしに女子力の差を見せつける気ね。 受けてやるわよ !

 メニューを見ると……


「サボテンのサラダ !? 」


「ちょっと酸味はあるけど、クセの無い味で美味しいですよ 」


 ……トゲは入ってないでしょうね。


 サボテンのサラダがきたので食べてみると美味しかった。


「佐江内さんのおすすめは ? 」




 まもなく運ばれてきた料理はお洒落だった。


「ネギトロとワカモレアボガドでぃっぷのタルタルわさびじょいゆソース です 」


 ……うぐぅ、負けてない、負けてないんだからね !


 次こそは、絶対に勝ってやるんだから !


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