第273話 命短し恋せよ乙女 ⑥

【蝶子side】


 ── 蝶子のお部屋 ──


 何時もの習慣で、お風呂上がりにヨガをしながら作戦を考えている。


 情報によると、蛍先生はアザゼル先生にアタックしているとか……


 ここは、余計なことをしないで、蛍先生とアザゼル先生が上手くいくことを願いましょう。


 それよりも、危険なライバルに成りそうな佐江内さえないを倒さないと危険な予感がするわ。


 星華ちゃんも秋穂ちゃんも、わたしの廉価版だから怖くは無いけど、得てして、ああいう家庭的な女の子がヒロインから男の子ヒーローを奪っていくのだから !


 明日は佐江内さえないと決戦の日ね。

 ファッションビル・ペルコで、女子力でボコった上で、嵐くんをあきらめさせてやるわ !!


 ── 蝶子、貴女ねぇ~。 わたしも人の事は言えないけど、少しヤリスギなんじゃないの ?

 ちょっと、えげつないわよ ──


 久しぶりに、わたしの中に居るオバサンアフロディーテが文句を言ってきた。


「だから、オバサンアフロディーテはダメダメなのよ !

『獅子は兎を狩るにも全力を尽くす』と云うことわざを知らないの ?

 わたしは、佐江内をライバルと認めたから、全力で倒すのよ !

 爪の甘いオバサンアフロディーテとは違うんだからね !」


 ── ……もう、勝手にしなさいな !

 どうなっても、わたしは知らないからね ──


 再び、オバサンアフロディーテは、わたしの中の奥に引っ込んでしまった。


 フフン、蝶子の腕の見せどころね !



 ◇◇◇◇


 翌日、放課後


「今日の行き先なんだけど、少し遠くだけど、ファッションビル・ペルコでいいかな ?」


 帰り支度をしていた佐江内を誘ってみた。


「他の子も誘って行く ?」


「あっ、私、二人で出かけるんだと思っていたので、夜野さんにお任せします 」


 ほほう ? サシでやり合う気、わたしと !


「じゃあ、二人で行こうか~ ♪」


「はい !」


 一緒に教室を出る。


「楽しみだね~ 」


「はい 」


 ◇◇◇◇


 二人が教室を出て行った後、ちょっとした騒ぎに成っていた。


「あの二人、何繋がりなのかな ?」


「一緒に遊ぶほど、仲が良かったなんて知らなかったよ」


「また、蝶子と佐江内が一緒にいるな。

 最近、あの二人は仲が良いよなぁ~」


「……嵐。 お前の目は節穴だと云うのは知っているが、さすがにソレはないぞ !」


「だったら、巧は知っているというのか ?

 彼女持ちは違うねぇ~ 」


「俺には火花が見えるんだが、嵐には教えてやらん!」


 ヘパイストスは、ジャンヌを連れて帰ってしまった。

 後に残されたアレスには考えても真相にはたどり着けないだろう。



 ◇◇◇◇


佐江内姫子さえない ひめこside】


 ファッションビルなんて初めてなんだけど……


 キラキラと別世界に見えてしまう。

 普段の服などは、近くの商店街の服屋か『し◌むら』で買うから戸惑ってしまう。


 どのお店もお洒落だなぁ~

 私みたいな田舎娘には、ものすごい場違いに思えてしまう。


「ねえ、佐江内さん。

 ドラッグストアに寄ってもいい ?」


「薬局ですか ?」


 薬局なら、ハードルも高くないよね。




「う~ん、どれにしよう 」


 全然わからない世界だ !


「佐江内さんは、何を使っているの ?」


「えっ !?」


 そもそも、ウチはシャンプーとリンスが分かれていないんですけど !


「そういうの使ってないので……

 ははは 」


「そっかぁ~」



 ◇◇◇◇

【蝶子side】


 でしょうね。

 今日一日で、わたしとの女子力の差を思い知らせてあげるわ !


 嵐くんも蝶子みたいな可愛い女の子の方が良いに決まっているわ !


 もう、勝ったも同然だけど、トドメを刺さないとね !


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