第271話 命短し恋せよ乙女 ④
【蝶子side】
嵐くんが、他の調理班の女の子と話しを始めた。
普段は教室では目立たない娘で、名前は……名前は、何と言ったかしら ?
星華ちゃんや秋穂ちゃんと違い、正直 可愛く無いから覚えて無いのよね。
※大江戸姉妹は別の意味で距離を取っているわ。
「
あの娘、さえないわね、確かに。
名は体を表すと云うけど本当ね。
「おっ、おはようございますっ、!」
「おっ、元気だな。
文化祭の買い出しなんだけど、スーパードコミヤで良いかな ?
他に良い店を知っているか ?」
「そっ、そうですねぇ。
お肉なら、商店街の『ハローファザーズ』。
お野菜なら、『八百屋お七』がおすすめですよ。
スーパーより少しだけど、お安いんですよ」
あの二人の距離の近さはなんなのよ !
文化祭以前から知り合いだったというの。
流石に、まだクラスメイトの仲を越えてはないわよね。
「そうだ ! これ、ウチの親がやっているファミレスのクーポン券があるから、一緒にファミレスで会議しようぜ 」
ちょっと、何 デートに誘っているのよ !
わたしだって、嵐くんからデートに誘ってもらったことが無いのに !
「意外と大江戸と佐江内は、お似合いのカップルに成るかもな……
どおかな、夜野さんも俺とカップルに成らないか ? 」
いい加減なこと言わないでよ、モブ !
「アハハ。 蝶子、まだ誰かと付き合うなんて恥ずかしいなぁ~ 」
自分の顔を鏡で見たことあるの !
可愛い、かわいい、蝶子と付き合いたいなんて、身の程知らず過ぎるわよ。
大江戸姉妹と星華ちゃん、秋穂ちゃんが白い目で見ている。
女の子は生まれながらの女優なのよ !
これくらいの演技くらい許してよね。
「嵐、早いな。
佐江内さん、おはよう 」
「おう ! 巧とジャンヌは仲良く一緒に登校か 」
あの気難しい巧くんまで知り合いなんて……
男子どころか人間そのものが苦手そうに見えていたけど、アレはフェイク !?
わたしと同じ、演技していたというの !?
おのれ、さえない 。 策士め !
新たなライバルに成る前に潰してやるわ !
その前に、敵の
星華ちゃんや秋穂ちゃんに、さえないさんの情報を聞いたら、二人とも呆れながらも教えてくれたわ。
◇◇◇◇◇
お昼に成ったので、わたしは佐江内さんが、一人でお弁当を食べようとしている所に向かった。
「佐江内さん。 一緒にご飯を食べようよ 」
彼女が返事をする前に、彼女の前の机を彼女の机にくっ付けた。
「わたし、高校生に成ってから料理をつくるように成ったから恥ずかしいなぁ~ 」
問題は佐江内のお弁当よね……
モテテクニックの一つが、
佐江内がお弁当を広げたのを見て、言葉を失った。
かわいい小さなおむすびに、きれいな焼き色の卵焼き、タコさんウインナーにほうれん草のごま和え、黒豆は、流石に既製品よね。
わたしが、佐江内のお弁当を凝視していることに気がついた彼女は言い訳をするように、
「あっ、違うんです !
お父さんと家で留守番をしている弟の分まで、つくっているので……「蝶子のつくった卵焼きと交換しましょう ! 」
半ば強引に、わたしの卵焼きを佐江内のお弁当に入れて、彼女の卵焼きを箸で取り口に運んで食べてみた。
「美味しい……」
思わず声に出してしまう。
正直、卵焼きを食べる前は……
わたし、女として何一つ負けてなくない!
と思っていたけど、料理だけは認めてあげるわ、佐江内 !
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます