第268話 命短し恋せよ乙女 ①

【嵐side】


 嘘だろう。 悪夢だ、悪夢に決まっている !


「 プ~、クスクス。 だから、忠告したのに言わんこっちゃ無いのじゃ !

 嵐お兄ちゃんが、グズグズしているから蛍先生はちょい悪オヤジに取られてしまったのじゃ ! 」


「まだ、取られたわけじゃねぇぇぇー !」


 邪神ユリリンが嫌なことをささやいてくる。


「でも、このままだと時間の問題なのじゃ。

 大人な蛍先生にしてみれば、お子ちゃまな嵐お兄ちゃんより、ちょい悪オヤジのアザゼル先生みたいな大人に惹かれるのも仕方ないのじゃ 」


「だけど、アザゼルは給料を全部、博打ばくちでスッテしまうダメオヤジなんだぞ ! 」


 しかし、由利凛は俺を小バカにするように、


「だから、嵐お兄ちゃんはダメなのじゃ !

 女性の中には、そんなダメな男に惹かれる『ダメンズ』と云うダメな男に惹かれる女性も意外と多いのじゃ 」


 ガ~~~ン !

 この俺が、ダメ悪魔アザゼルに負けるだと……

 まだだ、退かぬ!媚びるぞ!、省みる!

 悪魔アザゼルに負けてたまるか !

 俺は、何処ぞの聖帝さまと違ってんだ !



 ◇◇◇◇◇


【由利子side】


 アザゼル先生、蛍を不幸にしたら許さないぞ !

 しかし、嵐が蛍に好意を持っていたとは盲点だったな。

 あの年頃は年上の異性にあこがれると聞いているが……


「嵐お兄ちゃん。 頭の中で妄想していないで、行動あるのみなのじゃ ! 」


 グサッ !


 由利凛の言葉が胸に突き刺さった。

 我が娘ながら的確なアドバイスをするなぁ~

 わたしが独身時代には妄想をよくしたモノだが、由利凛や恵利凛は妄想をしないのだろ…………そういえば、あの娘たちには彼氏が居るんだったな。

 親としては複雑な気分だが、今は蛍を心配した方が良さそうだ。


 しかし、アザゼル先生と嵐かぁ~。

 そこはかとなく、ダメ臭がするんだが 大丈夫だろうか。


 嵐が由利凛と相談しながらスマホをイジッテいる。

 デートの情報でも見ているのだろうか。


「ねえ、ねえ、嵐く~ん。 今度の文化祭で、わたし達、バンドをやるんだけど ボーカルがいないの !

 だ・か・ら、蝶子たちのボーカルをやってくれないかなぁ~ ❤️ 」


 なっ 、夜野蝶子。 ぜんぜん気配を感じなかったぞ。

 夜野蝶子の出現に嵐も由利凛もタジロイでいる。


「蝶子の お・ね・が・い ! 」


「そこまでだ ! 不純異性交遊は認めないぞ 」


 嵐の腕に胸を押し付けている夜野蝶子を引っぺがした 。


 最近の学生は積極的だなぁ~ ……イカンイカン !

 これは、嵐たちをよ~~く監視しないとダメだな。


 それにしても文化祭かぁ~

 この大江戸兄妹の両親も問題児だったが、子供たちは輪をかけて心配だな。


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