第266話 一難去っても難は去らない ④

【嵐side】


「太平妖術、超魔人形 ! 」


 于吉が呪文を唱えると、(妹たちが)倒した自動人形オートマタが1ヶ所に集まり巨大な人形に成った。


「何処の特撮だよ。 于吉、卑怯だぞ ! 」


 と言ったものの、すでに奴らは逃げた後だった。

 まったく、逃げ足が早い奴らだ。


潮来圓明流いたこ えんめいりゅう、断空剣十文字斬り ! 」


 由利子オバチャンの斬撃で、巨大な人形は四つに別れて沈黙した。


 一応、人間だよな、由利子オバチャン……


 再び空間が開いて戻って来たアザゼルに、


「アザゼル先生。 後片付けはお願いしますね 」


 当然のように、後片付けを押し付ける明日菜女神アテナ

 流石だな、ドSの女神さまは。


 途方に暮れているアザゼルに、


「後で、新米を届けてやるから頑張れよ。

 我が県の名産品『一番🌟』だから絶品だぞ !」


 その一言で、やる気が出たのか自動人形の残骸を掃除し始めた。


 俺って優しいよな。

 沢山働いたから腹が減っているせいか、腹のムシが グーグー鳴っているぜ。


 ◇◇◇◇◇


 店の中に入ると、由利子オバチャンが人差し指を口唇にあてて、


七之助さん店主に聞いたのだが、今 2階でお見合いをしているから静かにするんだぞ。

 その代わりと云う訳ではないが、おまえ達の両親からお金を預かっているから、何を食べても良いからな 」


 いやっふぅ~~~!

 父ちゃん、母ちゃん、愛しているぜ !


 まずは、カキフライだろう。

 そして、土瓶蒸しに焼き銀杏に秋鮭の黄金焼きにフグのからあげに……食欲の秋、ばんざーい だな。

 日本人に生まれて良かったぜ !


 今日は歩いて店に来たから、由利子オバチャンも秋限定の鳳凰ビールのプレミアム秋味と云うビールを呑んでいる。

 実に旨そうに呑んでいるのを見ていたからか、


「嵐、アルコールは成人して大人に成ってからだぞ !」


 注意されてしまった。

 いやいや、俺だけじゃなくて、弟妹たちも凝視していたぞ !


 早く大人に成りたいぜ !


 俺たちが食事を楽しんでいると、二階から誰かが降りて来た。

 おそらくは、由利子オバチャンが言っていた、お見合いをしていた客だろう。

 先に降りて来たのは、チャラチャラしたホスト風のキザな男だった。


「アレは無いわ、絶対に女を不幸にするタイプよ。

 賭け事に浮気に借金。

 見合い相手には同情するわ 」


「見た目で判断してはイケナイのですが、わたしも英里香女神エリスに同意見です。

 アノ男の目は、すごく濁っていますからね 」


「 モグモグ、モグモグ、明日菜女神アテナが言うなら間違いない ! モグモグ モグモグ 」


 英里香女神エリス明日菜女神アテナパラス女神パラスが言うなら間違い無いだろう。

 相手の女性のことが気になった俺たちは、降りてくるのを待っていたら……


「蛍だと…… !」「「蛍先生…… !」」


 俺たちの平穏が全力で走り去るのを感じていた。


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