第258話 于吉の誤算? 誤解 ?

【于吉side】


 う~ん、来たのは失敗だったかも知れませんね。


「おい、于吉。 嵐が真相を知っているようなことを言っていたが、俺には知っているようには見えないぞ」


 否定出来ないのですが、あまりにも残念すぎるところが逆に怪しいのも事実なんですよね。


「左慈。 早急な判断は危険です。

 先ほどのアレは演技かも知れませんね 」


 私の言葉に左慈は驚いていますね。


「無能のフリをしていると云うことですよ。

 日本の時代劇でもあったでしょう。

 普段は昼行灯ひるあんどんと言われる程に無能のフリをしている侍が、暗殺の仕事が入ると優秀な暗殺者に変身していたのを 」


「俺には、とてもそんな風には見えないんだが、貴様于吉が言うのなら、そうなんだろうよ 」


 手がかりが無い以上は、このまま身を隠しながら監視を続けた方が良いかも知れませんね。


「手分けして、このまま大江戸兄妹を監視しましょう。

 私は嵐くんを監視するので、左慈は嵐くんの妹たちをお願いしますね 」


 そうすると、露骨に嫌な顔に成る左慈。

 よほど前回に恐ろしい目に有ったのでしょうか。

 確か、解剖されそうに成ったんでしたよね。


「俺は嫌だぞ、嵐の妹たちは凶悪すぎる !

 アレは悪魔に違いない 」


「私だって嫌ですよ、左慈。

 狂暴な女は遠慮したいですね。

 まして、左慈が悪魔呼ばわりする程なら尚更です 」


「おいおい、ずいぶんと言ってくれるな。

 悪魔だからって差別はよくないぞ。

 まあ、確かに嵐の妹たちは、俺たち悪魔でも恐怖を覚える存在だから、あながち的外れでも無いんだがな」


 バッ !


 その場から飛び退いて後ろを確認すると、先ほどのだらし無い男が居た。

 背筋に冷たいモノが走ります。

 気配が、まったくありませんでした。

 この男は、いったい……

 隣に居る左慈も臨戦態勢で構えていますが、緊張の為か武者震いしています。


「俺の名前はアザゼル。 悪魔のアザゼルさんだ。

 そう警戒するな、悪魔はむやみやたらに戦ったりしないからよ 」


 悪魔アザゼルと云うと神話に出てくる強力な悪魔です。

 だらし無いちょい悪オヤジかと思っていたのは、間違いだったようです。


「おまえ達には聞きたい事がある。

 ちょっとだけ付き合えや 」


 ぬかりました。 逃げようにも、御札を出した途端に、どうなるか解りません。

 侮っていたワケではありませんが、どうやら嵐くんは女神だけで無く悪魔とも契約していたのでしょうか。


 悪魔アザゼルの後を付いて行きながらも隙を見ていますが、やはり逃げられないようです。


 藪をつついて蛇を出す処か悪魔を出すとは予想外にしても予想外過ぎます。


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