第255話 誰がために鐘がなる ③

【于吉side】


 面白く無いですね。

 予定通りに世界中が混乱カオスの渦に巻き込んだと云うのに、それを行ったのが私達に寄るものでは失くなってしまったからです。


 バターン !


 扉を叩き付けるように開けて左慈が入ってくるなり、


「おい、于吉 ! 南華老仙なんかろうせん様が眠ったまま起きないぞ!

 どうなっていやがるんだ !」


 かなり動揺しているようですね。


「ああ、左慈。 それは例の二人が世界中のスーパーコンピューターを破壊しているのは知っていますよね。

 我が国のスーパーコンピューター『始皇帝』も破壊されたのは知っているでしょう ? 」


『何を言ってるんだ、コイツ』と顔に書いてありますよ、左慈。


南華老仙なんかろうせん様が、どうやって『始皇帝』を乗っ取ったと思いますか ?

 コンピューターなどを苦手にしていた老人がキーボードを叩いてハッカーの真似ごとを出切ると思っているのですか、左慈 ? 」


「はっ、まさか ! 」


 ようやく脳筋の左慈も気がついたようですね。

 まあ、仙人に成るだけあって、思考力はあるハズですからね。


「そうです。 南華老仙なんかろうせん様はをインターネット回線を通じて飛ばしたのですよ、『始皇帝』に 」


 歳を考えないで無理・無茶・無謀過ぎますよ、ご老人。

 それでこそ、我等の師匠なんですがね。


「それでは、南華老仙様は眠りから覚めずに死んでしまうのかよ !」


 ふふふ。 意外と情が深いんですよね、左慈。


「大丈夫ですよ、左慈。

 ああいうスーパーコンピューターの類いは地下か離れた所にバックアップの為の予備コンピューターがあるはずですからね。

 ただ、インターネット回線が断然されているでしょうから、しばらくの間は帰ってこれないでしょうけどね。

 こちらの南華老仙様の肉体の方は術で生命維持をしておきますから、暫くは眠ったままでしょうけどね 」


 しかし、スーパーコンピューターの位置など、我が国だけでなく、各国が極秘にしているハズなのに、的確に見つけ出すなんて、ただ者ではないですね。


 何処の勢力か知りませんが、私の楽しみを奪ったのですから、覚悟してくださいね。


 左慈がパソコンの画面に釘付けに成っています。

 例の二人が暴れている姿に夢中のようですね。


「左慈も好き者ですねぇ~。

 そんなに、その筋肉ダルマと闘いたいのですか ?

 おそらく、今の左慈では ボコボコにされるのが、オチですよ 」


 ギロッ !


 おやおや、どうやら図星だったようですね。


「悔しいが、テメェの言う通りだ。

 俺が見ていたのは女の方だよ、于吉 ! 」


 なるほど、左慈の好みのタイプは あのようなタイプでしたか。


「テメェが、何を誤解しているかは予想出切るが、今はいい。

 この女、大江戸嵐の側に居た女じゃないのか ?」


 ハッ ! 女に興味が無いので気付きませんでしたが、確かに左慈の言う通りです。

 …………興味が無いと言っても、私はノーマルですよ。


「左慈の言う通りです。

 しかし、嵐くんが指示したとは思えませんし、女神かも知れない存在が人間に関与しているのも解せません。

 こうなったら直接、嵐くんに聞きにいきましょう 」


「良いのかよ。

 嵐の奴は単純そうだから簡単に教えてくれそうだが、知らない可能性もあるんだぞ !」


「良いのですよ。

 知らないなら『嵐くんが知らない』と云うのが解るのですからね 」


『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』と日本のことわざにもありますしね。


 左慈は ぶつぶつ言っていますが、案外 嵐くんに会えるのが嬉しいのかも知らないですね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る