第253話 誰がために鐘がなる ①

【嵐side】


 今、俺は妹たちに命令されて正座させられている。


 英里香女神エリスが怒りながら、


「どうして、あのトラブルメーカー夫婦女神ヘーベーとヘラクレスを自由にしたのよ !

 お陰様で世界中が大騒ぎよ ! 」


 そう、あのお花畑夫婦は各国の大使館だけで飽き足らず、モスクワのクレムリンやアメリカのホワイトハウス、中国の中南海ちゅうなんかい、イスラエルのベイト・ハナッシ、などを襲い始めていた。


「俺に文句を言っても仕方ないだろう。

 現在、普通の人間を演っている俺が神である二柱を止められるワケが無いだろうに !」


 ヘラクレスが最後に俺のところに立ちよったことがバレてしまった。

 脳筋キン肉ダルマヘラクレスが、お袋女神ヘラから俺に渡すはずだった手紙を落として行ったからだ。


「それで、手紙には何て書いてあったんだ ?」


 俺が聞くと由利凛が手紙を俺に見せながら、


アレス嵐お兄ちゃんの手伝いをすることと、夫婦水入らずでしばらくは日本で過ごすように書いてあるだけなのじゃ !

 嵐お兄ちゃんが、アノ変態……ヘラクレスとヘーベーお姉ちゃんに頼んだのと違うの ?」


「アイツラに頼むワケ無いだろう !」


 クソゥ、お袋の奴女神ヘラ、ヘラクレスを厄介払いしたな !


「それなら良いのよ、それなら。

 そう、これは天災で有って私たちのセイでは無いワケね。

『災い転じて福となす』、良いことわざだわ。

 今回の災害で、スーパーコンピューターのOperating System(オペレーティングシステム)は、大江戸グループの『オモイカネ』に統一されるわね 」


 ???英里香は何を言っているんだ。

 俺の考えを読んだように由利凛がノートパソコンをイジリながら画面を見せてくれた。


「現在、アノ変…………夫婦は、各国のスーパーコンピューターを破壊しているのじゃ、物理的に !

 もともとハッカーにウイルス攻撃されていたから時間の問題だったけど、物理的にスーパーコンピューターを破壊されたから、各国が日本に協力を求めて来たのじゃ。

 日本のスーパーコンピューター『オモイカネ』だけが、ハッカーからの攻撃に堪えていた実績もあるから、当然の結果なのじゃ 」


 偶然か、アノ二柱が各国のスーパーコンピューターを破壊しているのは ?

 脳筋ヘラクレスお花畑ヘーベーが自分たちで考えて破壊工作をしているとは思えない。

 俺の灰色の脳細胞がフル回転を始めた。

 アノ二柱に指示をしている存在があるはずだ。

 英里香や由利凛の様子から二人は違うだろう。

 お袋女神ヘラは人間の社会に興味が無いから除外する。

 後は明日菜女神アテナだけど、こういうセコいやり方は明日菜は選ばないだろうし、いったい誰の指示なんだ?


 アレ?


「そういえば、明日菜の姿が見えないんだが、何処かに出かけているのか ? 」


 俺が英里香に聞くと、ヤレヤレといった表情で、


「今ごろ気がついたの ?

 あの娘なら、勇気お母さん女神メティスの所に陣中見舞いに行っているわよ。

 女神アテナとしても人間明日菜あすなとしても実の母親とのコミュニケーションが不足しているから、わたしが無理矢理に行かせたのよ。

 まったく、女神時代から頑固で融通が効かないのは変わらないんだから、此方が苦労するわよ ! 」


 女神時代は、ライバルだった二柱が人間に転生してからは、だいぶ変わったな。


 …………アレッ、何か忘れている気がする。

 まっ、そのうち思い出すだろうし、思い出せないなら大した事では無いんだろう。


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