第250話 嵐の受難

【嵐side】


「何故、お前が此処ここに居る、ヘラクレス ! 」


 青春の女神ヘーベーとイチャイチャしているヘラクレスを見て怒鳴った俺は悪く無い !


「夫婦が一緒に居るのは当たり前なのですよ、アレスお兄様 」


「キン肉、ニクニク、ニクは十八。

 元気ですかぁー ! 元気が有れば、何でも出来る。

 鍛えているか、アレス ! 」


 正真正銘の筋肉バカ、ヘラクレスの変わらなさに頭が痛くなる。

 こんな奴に負ける俺って……情けないくて涙が出てきそうだわ !


 何を目的に来たのか、ヘラクレスに聞いたがとぼけやがった、脳筋のクセに !


お袋女神ヘラの命令か、親父天空神ゼウスの命令、どっちなんだ? 」


 ピクッ !


 お袋女神ヘラの処に反応したキン肉バカヘラクレス

 昔から駆け引きが出来ない正真正銘の脳筋半神。

 あまり人間界のことに干渉したがらない天界の住人、それも浮気性の親父ゼウスがらみで無いとすると、息子である俺軍神アレス(義)娘たち女神アテナ、女神エリスを助ける為に派遣した……無い、無いわ~。

 あのお袋女神ヘラは、そこまで甘い女神じゃ無いわぁ~。

 おおかた、苦手なヘラクレスを日本に遠ざけたかったのが本音だろうな。


 ふと見ると、いつの間にか阿修羅王が来ていて、ヘラクレスのことを見ていた。


「ほう、貴公が英雄ヘラクレス殿か。

 鍛え上げられた筋肉、素晴らしいな……お飾りでなければな !」


「フッ、ならば試してみるか、仏教の守護神 阿修羅よ。

 俺は誰の挑戦も受けるぞ !」


 ガシッ !


 うわっ ! コイツら力比べを始めやがった !

 脳筋と戦闘狂、ただでさえ、酷暑で暑苦しいのに勘弁してくれよ。


 しばらくの間、力比べをしていた二柱の奴ら半神と神は、ニヤリと笑いながら握手をしていた。

 どうやら友情が芽生えたようだ。


「 俺は、これから任務にかなければならぬ。

 また逢う時を楽しみにしているぞ、阿修羅王よ」


「友よ、それは此方こちらのセリフだ。

 無事に任務を達成することを祈ろうではないか」


 酷暑の中、熱い友情を交わすふたり。

 そんな中、能天気なアホが、


「よっ、ひまか !

 悪いが、何か食わせてくれないか、軍神ちゃん。

 夏休みで給食は無いわ、すずみに行ったパチンコやパチスロで給料と賞与ボーナスをスッてしまうわ。

 散々な結果、ここ数日は、パン屋から恵んでもらったパンの耳しか食って無いんだよ !

 頼む、軍神 !

 アシュタルトや他の悪魔たちは、冥界に里帰りしていて頼れるのは、お前だけなんだ !」


 駄目悪魔アザゼルが空気を読まずにやってきた。


 そして、さんにんの目が合ってしまう。


「「「……………………」」」


 頼むから、こんなところで聖戦なんて始めるなよ !

 俺の祈りが通じたのか、ヘラクレスはヘーベーを連れて飛んで行き、阿修羅王は俺の後ろに控えて押し黙っている。

 阿修羅王からは殺気があふれているが、俺は冷や汗が溢れていた。


「おい、おい、軍神ちゃんよ。

 久しぶりに会ったら、ずいぶんと物騒な連中とツルンでいるじゃないか、いったい何があった ?」


 アザゼルが、ヒソヒソと耳打ちしてきた。

 その時、俺の灰色の脳細胞に稲妻が走った !


「おい、アザゼル。

 悪魔は対価があれば依頼を受けてくれるんだろう。

 だったら、ウチにある食料とアルバイト見習い陰陽師で稼いだ金で仕事を受けてくれ」


 俺はアザゼルに于吉や左慈たち仙人のことを話し奴らの目的の妨害工作を依頼した。

 お陰で、せっかく稼いだアルバイト代と家に有った非常食は無くなったけど。


 ホクホク顔で立ち去るアザゼルが笑いながら、


「任せな、軍神ちゃん。

 悪魔は契約は絶対に守るからな !

 頂いた金と食料分くらいは働いてやる。

 それに嫌がらせは大得意だからな、楽しみにしてくれや !」


 アザゼルが立ち去ると阿修羅王に問い詰められたので、


「日本には、『立っているものは親でも使え』と云うことわざがある。

 それにアザゼル達が対立しているのは聖書の神の勢力だけで、俺達 ギリシャ神話やインド神話と喧嘩をするつもりは無いようだから、大目に見てくれ 」


 カッ と目を見開いた阿修羅王は、


「『清濁併せ呑む』 流石、ギリシャ神話の軍神アレス殿は違うな。

 了解した、引き続き俺は嵐殿の手伝いをすることにしよう 」


 そう言い残し姿を消した阿修羅王。

 そろそろ、こけるの元に帰れば良いのに。

 そんなに帝釈天雷帝インドラが嫌いなのか ?

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