第248話 嵐の災難
【嵐side】
電車が止まってしまった。
台風が近づいているから、買い出しついでに遠出をしたのが裏目に出てしまった。
感電する恐れが有るために電車からは降りられない。
電気も止まっているから、電車内の空調も止まっている。
「にーにー、喉が渇いたよ 」
「お兄ちゃん、私もです 」
「
田舎の電車、そのせいか中はガラガラで空いている上に、二両編成のこの電車にはトイレが付いているのは不幸中の幸いだったな。
「嵐くん、『幼稚園の先生を希望している』と由利子先生から聞いた時は大丈夫かなと、心配したけど、これなら大丈夫そうね 」
蛍に
俺一人で引率することを心配して一緒に来てくれたんだ。
「わたしも居るんですけどぉ~、嵐くんも蛍先生も忘れないで欲しいんですけどぉ~ ! 」
何処から嗅ぎ付けたのか、蝶子も来ている。
犯人は判っている、由利凛だ。
こづかいが不足していたから、ハ◌ゲンダッツのアイスを買えないから、徳用のフルーツアイスキャンディーにしたのが気に食わなかったのだろう。
おのれ、
「お腹空いてない、三人とも ?
お弁当を持って来ているから食べる ?」
蝶子が聞くと三人とも
バックの中には保冷剤も入っていて、蝶子は保冷剤をハンカチで包みながら、三人に順番に充てるように言って渡していた。
女神時代のアフロディーテなら絶対にしないだろう親切なことをしている蝶子には、アフロディーテの記憶が
美味しそうに食べる幼女たちを見て ホッ とした。
食欲が有るなら熱中症も大丈夫だろう。
俺たちも蝶子の作ってきたお握りをもらい食べ始めた。
う~ん、良い塩梅の塩加減なお握りを作った蝶子に驚いてしまう。
人間に転生した蝶子はアフロディーテとは別人のように思えてしまう。
「蝶子ちゃんは、良い幼稚園の先生にもお嫁さんにも慣れるわね。
嵐くんも蝶子ちゃんを大事にするんだよ、彼女なんでしょう 」
勘違いしている蛍に冤罪を晴らそうとしたら、
「やっぱり判りますぅ~。
わたし達、お付き合いしているんですぅ 」
そう宣言して、蝶子が腕に絡んできた。
「ヒューヒュー、お熱いねぇ~ふたり共 !
でも、学生らしい交際をするんだぞ 」
「ねーねーがにーにーと付き合うなら陽野芽、応援するよ !」
「わたしも、蝶子お姉ちゃんなら応援します」
「姉ちゃん、お握りくれたから応援する 」
いつの間にか、全員が蝶子に餌付けされていた。
誤解を解こうと皆に説明しようとしたら、
──『 お待たせしました。
只今より当電車は運転を再開します。
ご不便を御掛けてしまい申し訳ありませんでした 』──
ガタン ガタンゴトン !
電車が動き始めてしまい、喜んでいる皆に説明する機会を失ってしまった。
そして見てしまった、蝶子が小さくガッツポーズを取る姿を!
ハッ ハメやがったな、蝶子 !
外堀が埋められていく、どんどんと。
アフロディーテのようなお花畑脳だと
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