第245話 逆襲 ④

【嵐side】


随分ずいぶんとボロボロにされましたね、左慈。

 貴方が手こずるとは、嵐くんの弟妹たちは強敵だったのですか ?」


 于吉の質問に嫌そうな顔をした左慈は俺に向かって、


「嵐、てめえの弟妹たちは悪魔か !

 躊躇ちゅうちょなく、気絶した俺を解体しようとしたぞ !」


 一応、女神と神なんだが、邪神ユリリンも混じっているから、あながち間違いでも無いんだな。


「それくらいなら私もやりますが、左慈」


「貴様は黙っていろ、マッドサイエンティストめ !」


 苦々しく言う左慈に少しだけ同情していると、


「嵐、てめえだけには同情なんて、されたくは無いからな! 」


 身構えて、今にも俺に襲いかかろうとしている左慈に向かい、


「大丈夫か ?」


 と聞いたら勘違いしたらしく、


「てめえの弟妹たちは、于吉の特性『睡眠香』で眠っているぞ !

 ラベンダーの香りに包まれて夢の中にお出かけ中と云う訳だ 」


 いや、妹たちの心配では無くて、お前左慈の心配をしていたんだが、言ったら怒るだろうから黙っておこう。


「私共の売れ筋商品のアロマオイルなんですよ。

 どうです、おひとつサービスでお安くしますよ 」


「「こんな時に商売しているんじゃねぇー !」」


 思わず、左慈とかぶってしまった。


「苦労しているな、左慈も」


「敵じゃなかったら、朋友ぽんゆうに成ってたかもな、嵐」


 拳を交えたからこそ判るが、立場が違ったらダチ公親友に成ってかも知れない。


ひどいですね、私一人が悪者ですか、左慈」


 そうだ、お前(于吉)腹黒メガネが一番悪い !


「こんな奴でも同志だから、ニ対一でも文句を言わないでくれよ、嵐。

 負けっぱなしだと、他の同志に申し訳が立たないからな 」


「本当に酷い扱いですね、左慈。

 後で、貴方とは話し合いを持たないとイケマセンが、とりあえずは嵐くんを排除してからにしましょうか 」


 左慈と于吉が相手か。

 いささか骨が折れるが、主人公の宿命だから仕方ないか。

 そんな風に考えていたら、


「ニ対一 じゃ無くて、ニ対ニだぜ、妖仙道士 !」


 声のする方を見ると、天龍八部衆・迦楼羅かるら に乗った、こけると海里が上空に居た。

 迦楼羅から舞い降りた、こけるは俺の隣に並びながら、


「海里のことは頼んだぞ、迦楼羅 !」


 こけるからの頼みを聞いた迦楼羅は、海里を乗せて離れて行った。


唵阿爾怛摩利制曳莎訶 おん あにちゃ まりしえい そわか

 摩利支天まりしてん太陽剣たいようけん!」


 こけるの金剛杵からビームサーベルのような光の刃が出てくる。


 科学と陰陽師か、燃えるぜ !


「『リターン・マッチ』と云う訳ですね。

 望むところです、それでも私達のるぎませんけどね!」


 コノヤロ腹黒メガネ、まだ隠し球を持っていやがるな !

 こけるに合図をすると、俺の意図が判ったのかうなずいてくれた。

 頼むぜ、相棒こける


「う~ん、ボクのライバルは蝶子や蛍じゃ無くて、こける なのかなぁ~ 」


 ベルの不穏なつぶやきは無視するとして、やっぱり俺の相手は左慈に成りそいだな。


 一触即発に成りそうに成った時、


「待ちなさい ! 」


 振り向くと武器を持った、明日菜と英里香、パラスが居た。

 明日菜とパラスは木刀の薙刀ナギナタだけど、英里香はガトリング銃を持っている。

 ジト目で英里香を見ると、


「安心して !

 本物じゃ無くて、合法のガス銃よ。

 少しだけ改造しているけど……」


 おそらく、ヘパイストスが改造したんだろうから、ただのガス銃な訳無いだろうな。


「残念ですが事情は変わりました。

 私達は戦略的撤退をさせてもらいます。

 分の悪い賭けはしない主義なので失礼させてもらいます 」


 言うが早いか、術札を数十枚、左慈の下に円上に展開させると、


「太平要術 『転移』!」


 左慈は落とし穴に落ちたみたいに消え去り、続いて于吉も穴に飛び込むと穴は消えてしまった。


「クッ、南華老仙なんかろうせんまで居るのかよ、チクショウ ! 」


 こけるのつぶやきだけが、俺たちの頭にこびり付いていた。


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