第244話 逆襲 ③

【于吉side】


 まったく、驚かせます。

 嵐くんでは無いですよ、短期間に私の自動人形オートマタを複製するだけでなく、応用してアンナ物強化プロテクターまで製造するなんて、魔法工学士としては製造者に嫉妬してしまいます。


「オラ オラ オラ オラ オラァー!」


 量産型の自動人形を殴り飛ばしながら近付いて来る嵐くん。

 嫌ですねぇ~、熱血くんは。

 ただでさえ、日本の夏は暑苦しいのに、熱血くんとの格闘は左慈の担当ですよ。


 10、9、8、7、 私を見据えながら、勝利を信じて近付いて来る嵐くん。


 5、4、3、2、1、


「腹黒メガネ、覚悟はいいかぁー ! 」


 大きく振りかぶり私を殴り飛ばそうと強く踏み込んで来て、


 0、 スポッ !


 あらかじめ用意した落とし穴に落ちていく嵐くん。


ひ~きょ~うも~のぉ~卑怯者!」


 こんな見え透いたにかかってくれる嵐くんは好きですよ。


「さあ、さっさと埋めてください、面倒くさいので 」


 量産型自動人形に命令してから、左慈を助けにでも行こうかと思っている処で、


 ゴォォォー !


「勝手に埋めるなぁー、俺は生ゴミじゃ無いんだぞぉぉぉー ! 」


 嵐くんは背中にあるランドセルから火を吹きながら落とし穴から脱出してしまいました。


「すみません。 私の母国では、失敗作や面倒な物は埋めてしまうのが習慣なもので、ついヤってしまいました」


隠蔽いんぺいするんじゃねぇー !」


 いい突っ込みです。

 左慈は怒ると無視してくるので、つまらないんですよね。


 空高く舞い上がった嵐くんは、上空から身体をひねりながら拳を出す用意をして、


「スパイラル・ボルトー ! 」


 何処かで聞いたような必殺技みたいですね。


 ヒョイ !


 当然、当たるワケにはいかないので避けます。


 ドォォォーン !


 地面にクレーターが出来ました。


「避けるんじゃねぇー !」


 まったく、ワガママな人ですねぇ~。


「野蛮ですねぇ~、嵐くんは。

 もう少し知的に遊びましょうよ 」


 少し挑発したら、嵐くんは背中のランドセルから棒の用な物を引き抜いて、私に向かい振り下ろした。


 ザクッ !



 ♟♞♝♜♚♛


【嵐side】


 ベルから教えてもらった『切り札(その1)』のレーザーサーベルで于吉を真っ二つにした。


「ヤったね、嵐 ! 勝利のポーズは考えている ?」


 はしゃぐベルには悪いが、


「フラグ立てているんじゃねえよ、ベル !」


「ヘッ ?」


 ヒョイ !

 背中のランドセルにある予備のレーザーサーベルをに取られた。


「ほうー、これはこれは、良い物を貰いました。

 プレゼント、ありがとうございます、嵐くん」


 にこやかに笑いながらレーザーサーベルをマジマジと見詰める于吉は、新しい玩具を得た子供のように嬉しそうにしていた。


「貴殿方には、二体もの高性能の自動人形オートマタをダメにされたのですから、これくらいは貰っても罰はあたらないですよね」


「どうせ、その身体も自動人形オートマタなんだろう。

 男なら生身の身体で闘えよ、軟弱者め !」


 俺が真っ二つにした于吉は人形だと気づいていたから遠慮なく斬りつけることが出来たんだ。


「今時、硬派ですか、モテませんよ……とっ、既に彼女が居るんでしたね、失礼しました」


 勝手に彼女にしているんじゃねぇー、と叫びたかったが……


随分ずいぶんと楽しそうじゃないか、于吉。

 チッ、俺は貧乏くじを引いたと云うのに面白くねぇなぁ~ 」


 于吉の隣に左慈が居たからだった。

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