第242話 逆襲 ①

【嵐side】


 ベルと蝶子に挟まれている所に、阿修羅王が左慈を小脇に抱えながら戻ってきた。


「楽しそうだな、軍神アレス。

 姑息こそくにも不意討ちしようと隠れていた小悪党を捕獲したぞ 」


 ドサッ !


 無造作に投げ出された左慈は気絶していた。

 コノヤロウも懲りないよな、本当に !

 気絶した左慈を見ている妹たちが怖い。

 頭の良い奴は、コッチの予想外なことを考えているからな。


「嵐お兄さま。 コレ左慈、異世界人なのか仙人なのかを人間の違いが解るように実験……観察したいから、わたし達が預かって良いかなぁ~ 」


 英里香が、おねだりしている。

 しかし騙されてはイケナイ !

 これは、お願いにみせかけたなのだから。


「どうぞ、どうぞ。 好きに使って良いぞ」


 兄より優秀な弟は目障めざわりだが、兄より優秀な妹には逆らってはイケナイ !

 何度も女神アテナに負け続けたからこそ、学んだことなんだ !


 ズルズルと左慈を引きずって行く妹たち。

 せめて、担架たんかにくらい乗せてやれば良いものを、扱い方が雑すぎる。


 ゴン ✨


 左慈の頭が建物の角にぶち当たった。

 俺は悪く無ないからな、恨むなら妹たちにしろよ、左慈。


 さて、今日は何も予定が入っていないから『久しぶりにゲームでもしようかな ?』と考えていたんだが、二人は俺の腕を離そうとしない。

『どうしたものか』と悩んでいたら、


「アー ! 嵐、てめえ『両手に花』とは生意気だぞ !」


 こけるアホがやって来た。

 ずかずかと歩いて来たこけるは、


「ねえねえ、可憐なお嬢さん。

 嵐なんか、ほっといて僕とお茶でもしませんか ? 」


 ベルをナンパしていた。


 バキッ !


「こける君のアホー ! ウチとデートしているのに、堂々と浮気するなんて最低 !」


 海里のカカト落としが、こけるの頭に決まってい

 た。


「グフッ !」


 パタン ! 倒れたと思った、こけるはすぐに起き出して、


「アホー、死ぬかと思うくらい痛かったぞ !

 だいたい、デートなんかじゃ無いだろうが !

 今回は、嵐に用があって「こける君のアホー、ウチがこんなに頑張っているのに、余所よその女の子がそんなに良いのかよぉー ! 」


 泣きながら去って行く海里を ボー と見送るこけるニブチンやろう

 仕方ない、海里の為だ。 こけるはどうでもよいがな。


 ドカッ !


いてっ !嵐、何をしやがる 」


 睨むこけるを無視して、


「さっさと海里を追いかけろ !

 でないと、後から後悔するぞ ? 」


 しぶしぶながら、海里を追いかけ始めたこける。


「まったく、世話が焼けるぜ !」


 俺の一言に、ヒソヒソと話し合う蝶子とベル。

 君たち、仲が良かったかね。



「ほ~う、これはこれは予想以上の出来ですね。

 わざ自動人形オートマタを残したのですが、本家・魔法工学師としては嫉妬してしまいそうです。

 著作権料金の代わりに、その自動人形は私がもらい受けましょう」


 声のした方を見ると、


腹黒メガネ于吉 !」


 俺が怒鳴ると、メガネをクイッとあげながら、


「ずいぶんヒドイあだ名をつけるのですね。

 メガネが本体では無いんですよ、私は」


 そう言いながら取り出したリモコンのような物を操作すると、ベルの動きが止まってしまった !


「あらかじめ『罠』を仕掛けて置いたんですよ。

 よく解らない技術には気を付けてくださいね。

 勉強に成ったでしょう」


 勝ち誇った于吉は、ニヤニヤしながら俺をバカにしていた。

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