第237話 AI ③

【嵐side】


「私もねえ、左慈ほどではありませんが、意趣返しくらいはしたかったんですよ。

 こける君、彼女が大事なら私とも遊んでくださいね」


 于吉が笑いながら言っているが、罠があるに決まっている。


「おい、腹黒メガネ于吉

 左慈のヤロウは一緒じゃないのかよ! 」


 あのバトルジャンキーが大人しくしているワケがないからな。


「ああ、左慈は前回の嵐くんとの闘いで負けた後遺症で休んでいますね。

 一時期とは云え、不死身化したり解けかかっていた饕餮とうてつの封印からはみ出していた悪気にあてられたので、ダメージを受けたのでね 」


 古代の悪神を利用しようとした罰だな。


「それで、どうすれば海里を解放してくれるんだ ?」


 こけるが怒りを抑えながら質問すると、于吉は嬉しそうに、


「なあに、簡単なことですよ。 前回のリターンマッチです。

 あまりもアッサリと、やられてしまったので、一矢報いたく成っただけですのでね 」


 実力差なのか、油断していたのか、確かにアッサリ負けたからな、于吉は。


 ♟♞♝♜♚♛


 于吉に呼び出された旧小学校後に来ると、于吉と白装束に頭から白い被り物をした集団がいた。

『 一人で来い』なんて指示も無かったから、当然のことながら、こけるに付いてきた。

 念の為に腕時計型のスマホには、ベルが控えていてアドバイスをくれることに成っている。


「お待ちしていましたよ、道頓堀こける君、大江戸嵐くん。

 こける君の恋人さんは、お渡ししますので、受け止めてくださいね 」


 そう言うと、于吉は旧小学校の屋上を見た。

 しかし、


「ちょっと、アナタ達。 手筈てはずどうりに人質を屋上から突き落としなさい ! 」


 やっぱり、まともに海里を解放する気は無かったな、外道め。

 海里の代わりに旧小学校の屋上に現れたのは、


「残念だったわね。 海里は確かに、わたし達が受け取ったわ。

 爪が甘いわよ、道士さま 」


 英里香がどや顔で挑発する後ろには、明日菜とパラスに保護された海里の姿があった。

 そう、明日菜と英里香に相談して、助っ人を頼んだんだ。

 時間前にベルがコントロールしたドローンを飛ばして敵情視察した結果、于吉の策を予想した英里香と明日菜に人質救出を頼んだ。

「それなら、この術は破れますか、こける君! 」


 于吉が御札を投げると地面から巨大な石が俺やこけるを囲むように沢山出現した。


「『石兵八陣せきへいはちじん

 この中国五千年の秘術、たっぷり味わってください ! 」


 于吉は自信たっぷりに宣言した。

 どうやら、こけるとの術合戦に負けたのが悔しいと見える。


「何処で聞いたような気がするな……」

 俺の呟きにベルが、

「もう忘れたの、嵐 !

 一緒に遊んだファンタジーゲームで、由利凛が使っていた術じゃないか !」


 お~、そうだった。

 確か、迷路の術だったよな。


 しかし、こけるは慌てることもなく、


「 道頓堀こけるの名において命ずる。

 召還、天龍八部衆・迦楼羅かるら阿修羅あしゅら !」


 こけるが懐から出した御札が式神に変わった。

 一体は鳥人間みたいな感じだったが、もう一体は三面六手の戦闘の強そうな感じだ。


「迦楼羅、于吉のところまで連れて行ってくれ ! 」


 そう言うと、こけるは鳥人間みたいな式神に乗っかり飛び立っていった。

 残された俺と三面六手の式神は置いてけ堀にされてしまったが……


〖俺の名は阿修羅。 奴に手助けするのはしゃくだが、今回だけは手助けしてやる。

 異国の神よ、余計なことは話すなよ 〗


 式神から直接、テレパシーが頭に伝えられた。

 阿修羅は六本の手に持つ剣で岩を砕き始めた。


 確か、阿修羅王と帝釈天(雷帝インドラ)は仲が悪かったと記憶しているんだが、よく式神に成ってくれたよな。


 岩をどんどん破壊する阿修羅王の後を俺は、ゆっくり付いて行くことにした。

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