第233話 狙われた嵐 ①

【嵐side】


 もうすぐ夏休み。

 本来なら喜ぶべきなんだが、既にスケジュールがいっぱい入っている俺には嬉しくはなかった。


「俺の青春は灰色かよ。

 いったい、何故こんなことに成ったんだよ !」


 思わず、つぶやいてしまうと、


「なら、アレスお兄さまは、わたしとでもしますです ? 」


 妹の青春の女神ヘーベーが居た。


「お前、いったい今まで、何処に居たんだ ?

 あまりサボると、ヘルメスみたいにお袋に女神ヘラに怒られるぞ 」


「失礼ですね、アレスお兄さまは。

 わたしは日本のことを勉強する為にアルバイトしてたですよ ! 」


「へー、コンビニででも働いていたのか ? 」


 俺が質問すると、ヘーベーは ニヤリ と笑いながら、


「夕日食品と云う会社で働いていたですね。

 そう、の為に働いたです 」


 神の食品 ?

 そんな食べ物、有ったか ?

 俺が不思議そうにしていると、ヘーベーが#アレ__・__#を出してきた。


完璧パーフェクトな食べ物、でーす !

 アンブロシアより美味しいですよ、アレスお兄さま」


 ウッ、納豆かよ。

 好き嫌いの少ない俺達、大江戸兄妹が共通して苦手な食べ物じゃないかよ !


「お土産として、ギリシャのお父様ゼウスに沢山、たくさん送ったから喜んでいるですよ」


 否、それ嫌がらせだからな。

 親父ゼウスには同情しないがな。


お袋女神ヘラには何を送ったんだ ?」


 俺が聞くと、ヘーベーは嬉しそうに、


お母様女神ヘラには、日本の化粧品やシャンプーやリンスを送ったですよ。

 もっと送って来るように、お母様からリクエストのメールが来たですね 」


 コイツ、わざとやっているな。

 親父ゼウスには、酷い目に合わされているから、ヘーベーは攻められないな。


 ムッ、殺気 !


「死ね、雑種め ! 」


 突然、後ろから攻撃してきたものを、寸でのところで避けることが出来た。


左慈さじ、てめえ、卑怯だぞ !」


「チッ、避けたか。

 この前は油断していたから負けてしまったからって勘違いするなよ、人間 !」


 妙に殺気だっているな、左慈の奴。

 ……つ~うか、脱走して来たのかよ !


「やあ、スミマセン、大江戸嵐くん。

 左慈が、どうしても『君に復讐をする』と聞かなくてねぇ。

 一応、私は止めたのですが…… 」


 いつの間にか、于吉までもが居やがった !


「陰陽寮から脱走して何を企んでいやがる、于吉 !? 」


 俺が于吉に聞いていると、


余所見よそみしているんじゃねえー !」


 左慈が真っ赤に成りながら、再び襲ってきた。

 手には中国刀が握られていた。


「おいおい、此方こっち素手すで、無手なんだぜ。

 卑怯とは思わないのか、道士と云う奴は ?」


「卑怯もクソもあるか !

 勝てば良いのだ、勝てばな !」


 怒りからか、ビュンビュンと大振りしているから避けるのは容易だが、冷静に成られるとやっかいだな。

 俺はオヤツ袋から煮干しを出して、


「短気な奴だなぁ、カルシウムが足りて無いんじゃないか ?

 俺のオヤツを分けてやろうか ? 」


 煮干しを左慈の目の前に見せると、左慈はますます怒りだした。


 中国刀を投げ捨てて、


「俺は冷静だ ! 武器など使わなくても、ただの人間ごとき、俺の拳法で倒せるわ ! 」


 ……何処が冷静なんだよ !


 ガシッ バキッ バキッ バキッ !


 この間と同じような展開に成るが、左慈が懐から飲み物を出して飲んでしまった。


 左慈がうす黒く変化した。


「クックックッ、一時的だが俺は人を辞めたぞ、人間……否、大江戸嵐 ! 」


 ドーピングかよ、キタネェなぁ !


「気をつけてください、嵐くん。

 左慈は一時的にゾンビ化していますから、痛みなど感じずに、リミッターも外れた状態ですから、さっきまでよりは強化されていますよ 」


 于吉が眼鏡を、クイッと直しながら教えてくれた。


「良いのかよ、そんなことを教えて !

 味方なんだろう、左慈は 」


「良いですよ、流石に左慈もやり過ぎですしね。

 それに

 ただの人間の貴方に対するサービスです 」



 于吉は余裕しゃくしゃくで教えてくれた。

 舐めきってくれているな、コイツら。


 それなら、……


「震えるぞハート! 燃え尽きる程ヒート!

 喰らえ、真紅のオーバードライブ !」


 油断している左慈の右腕に俺の必殺技を喰らわしてやった。


 吹き飛んだ左慈は起き上がれず苦しんでいる。


「ヤったか !? 」


 言ってから気がついた、アッ、フラグを立ててしまった……

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