第234話 狙われた嵐 ②

【嵐side】


「オオー ! 嵐くんは波紋はもん使いだったのですか!?

 日本の漫画は本当だったのですね 」


 于吉が目をキラキラさせながら聞いてきた。


 んなワケ無いだろう、パンチに神気を少し入れただけだ。

 それでも、ゾンビなどの邪悪な存在には劇薬なはずだ。


 ムクッ


 クビがあらぬ方向に向いた左慈が起き上がってきた。


「大江戸嵐、貴様はただの人間じゃ無いな ! 」


 ありゃりゃ、バレたかな。

 何せ、ギリシャ神話で一番のイケメン神だからな。


 ゴキッ


 自分のクビを元に戻しながら左慈はヘーベーを指差しながら、


「おおかた、其処そこの異国の女神から使徒しとにでもしてもらったのだろう。

 女神からもらった仮初かりそめの力で、勝った気でいるのは大間違いだと教えてやろう 」


 左慈は古びた壺を取りだした。


「 ……何処から出した、そんな物 !

 道士はアイテムボックスでも持っているのか ?」


 俺が質問するとドヤ顔で左慈が、


「クックックッ、貴様が女神の力を借りるなら、俺もまた古代の神の力を使わせてもらう !」


 左慈が壺の封印を破ろうとした時、


「左慈、流石にそれはやり過ぎです !

 四凶の饕餮とうてつの封印を解いてしまえば、我々にも制御出来ないのですよ ! 」


 饕餮とうてつ !?

 確か、ゲームの敵ボスにいたような気がするな。


〖アレスお兄さま、あの左慈と云う人は邪神にあやつられています。

 相手は弱体化しているとは云え、邪神なので、お母様女神ヘラから預かってきた神器をアレスお兄さまにお貸しします 〗


 ヘーベーが念話で伝えてきた。

 なんだろう、アダマスの剣かな、ハルペーかアイギスの盾でも闘えるな。



 しかし、ヘーベーが渡してきたのは、


「掃除機 !?

 おい、ヘーベー、俺に掃除でもやらせる気かよ ! 」


 ヘーベーに文句を言うと、


「誤解ですよ、アレスお兄さま。

 ヘパイストスお兄さまの倉庫から持ってきた『邪神スイーパー』ですね。

 説明書を読みましたが、使い方は普通の掃除機と一緒で、邪神を吸い込む神器みたいですよ 」


 一抹いちまつの不安があるが仕方ない。


 左慈が封印を解くタイミングに合わせて、


「ポチっとな ! 」


 ブォー !


 掃除機がゴミを吸い込むように、壺の封印を解かれ出てきた饕餮とうてつは、弱体化していたせいもあるのか、直ぐに邪神スイーパーに吸い込まれた。


 スイッチを切り替えて封印ボタンを押したら、


 コロン


 泥団子のようなかたまりが転がっていた。


〖 その塊を封印用の神器に入れるです、アレスお兄さま〗


 ヘーベーが出してきたのは、どう見ても電子ジャーにしか見えない。

 これをどうしろと云うんだ。

 邪神の炊き込み御飯なんて食べる気は無いぞ。


「おー、間違いました !

 それは、わたしのマイ炊飯器でーす。

 納豆には炊きたての白い御飯が最高でーす。

 本物の封印する神器は、コッチでーす 」


 ヘーベーが出してきた本物の神器は壺だった。

 壺が封印のデフォなのか ?

 アニメのポセイドン伯父もハデス伯父も壺に封印されていたみたいだが……


 壺に饕餮の塊を入れて、ふたをしてから俺特性の札を張り、


「封印 !」


 陰陽師の術では無く、軍神アレスの神力を使い再封印をした。

 封印した壺をヘーベーに渡したところで、我にかえった于吉が気絶した左慈を抱き抱えながら、


「ここは、戦略的撤退をさせてもらいます。

 リターンマッチは後日にさせてもらいますね 」


 そう言い残して消えてしまった。

 まだ、あきらめていないのかよ !


 どうせなら、こけるの方に行けばよいのに、変な奴らに目を付けられて迷惑だ。







 ※アダマスの剣 ……ガイアーがウラノスへのクーデター用に作った鎌、クロノスが使用。その後の行方はわからない。


 ※ハルペー ……ペルセウスがメデューサを殺したときに用いた鏡のような鎌、アテナに返したという。


 ※アイギスの盾……あらゆる物を防御出来る盾・メデューサの首をはめ込んでからは攻撃にも使えた。 (イージス艦の語源です)


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