第231話 陰陽師か保育士か ⑤

【嵐side】


 何者だ、アイツらは !

 空中に浮かぶなんて、ただ者ではないぞ !


「蘇我入鹿の宝が有ると聞いたから、アイツらに協力したのに古ぼけた古銭だと !

 それとも、この古銭が大金にでも成るのか ? 」


 小者田議員が騒いでいた。


「馬鹿な連中ね。 奈良時代の銅銭なんて学術的には価値は有っても古い銅銭なんて、たいした金額には成らないわよ。

 当時に金銀の加工技術なんて、有っても未熟なんだから少し考えれば解りそうなもんだけど、所詮は世襲議員のバカボンボンだから欲望で頭がいっぱいだったのでしょうね 」


 磐長姫子さんが言うと、ガックリして膝をついていた。


「それで、あなた達の狙いは何なの ?

 見たところ、大陸の道士どうしみたいだけど 」


 磐長姫子さんの質問に男達は笑いながら、


「フッ ハッ ハッ ハッ 、その男の欲望を利用して平和ボケした日本を魑魅魍魎ちみもうりょうの世界におとしめてやろうとしたが、本当に使え無いなぁ~、乳母日傘で育った奴は。

 俺の名は左慈さじ、隣に居るのが于吉うきつだ。

 さあ、第二試合の始まりだ。

 覚悟はいいか、人間ども ! 」



 左慈さじ于吉うきつ、何処かで聞いたような名前だな ?


 俺が不思議そうな顔をしていたのか、こけるが教えてくれた。


「三国志に出て来る仙人の名前だ。

 もっとも、奴らは名前をかたっているだけだろうがな ! 」


「ようするに、なんだな 」


「「違ーう !!」」


 二人の厨二病が俺をにらんでいる。

 そんなに勘に触ることを言ったか、俺。


「嵐、奴らをかばう訳では無いが、大陸の術者は真名まな、本当の名前を隠すモノなんだ。

 呪いや精神支配などの術をかけられない為にな 」


 なるほど…………ん ?


「こける達は本名だけど、大丈夫なのか ?

 呪いとか、精神支配とかは 」


「俺達、陰陽師を含めて日本人は守り神(仏)の保護にあるから大丈夫だが、中国は神も仏も否定して宗教施設を破壊しまくった為に神々の恩恵は受けられ無いんだ。

 だから、真名を……「一般人みたいだが、貴様は俺が殺す ! 」


 こけるの説明が終わる前に左慈さじと名乗った男が俺に向かって来た。

 どうやら素人だと思って体術で俺を殺すつもりらしいな……


 左慈が上空から蹴りを放って来たのを左足を軸にして弧を描くように避けて逆に避けた勢いを利用して逆回し蹴りを左慈に喰らわした。


 バキッ !


 俺の逆回し蹴りを咄嗟とっさにガードした左慈は俺を睨み付けながら、


「ただの人間にしてはやるな !

 今度は本気でゆくぞ ! 」


 バキッ バキッ バキッ バキッ !


 左慈の攻撃を全て流しながら隙を見付けて、腕を絡め取り投げてやると、


 ドン !


 石棺にぶつかり、ダメージを受けたのか直ぐに立ち上がることが出来ないようで……

 横目でこけるを見ると、于吉が倒されていた。

 見たことの無い妖怪?がこけるを守るように立っている。


「天龍八部衆の迦楼羅かるら鳩槃荼くばんだだ。

 まだ二体しか契約していないが強力な式神だ 」


 俺達が左慈や于吉を倒したのを見計らったように他の陰陽師たちが現れて、


「ここからは我々、陰陽寮に任せてもらおう。

 磐長姫子事務所への依頼は完了しましたのでお引き取りください。

 報酬金は後で支払います。 ご苦労様でした」


 と言いながら追い出されてしまった。

 磐長姫子さんもこけるや海里も黙って従っていたから俺も我慢したが、……


「アイツら手柄を横取りするつもりなんじゃないか ? 」


 つい、愚痴を呟いたら、


「ええ、そのつもりで見張っていたのでしょうね。

 いいのよ、此方は『名より実を取る』主義だからね。

 陰陽寮にも恩を売ったことだしね。

 それに、たぶん……」


 磐長姫子さんは悪い顔をしながら微笑んでいた。


「それより、大江戸嵐くん、といったわね。

 陰陽師に成りたいなら、わたしの弟子に成らない ?

 ちゃんと一人前に成るまで面倒見るわよ。

 その代わりに#時給は安い__・__#けどね 」


 俺が二つ返事で頼もうとしたら、こけると海里が全力で首を振っている。

 姫子さんが振り向くと、知らないフリをしていたから、おそるおそる聞いてみた。


「時給って、いくらなんですか ? 」


「時給250円よ。 修行を付けてもらえるんだから妥当でしょう。

 一応、言っておくけど、陰陽師は特別職だから労働基準法の範囲外だから合法よ 」


 ブラック職業じゃないかよ、陰陽師 !


「ちなみに、俺の時給は255円だからな 」


 こけるが独立したがる理由が解った。


「誤解が無いように教えるけど、こける君は成功報酬金は別に渡しているからね。

 だから、わたしを守銭奴みたいには思わないで欲しいわ 」



 結局『考える時間が欲しい』と言って、その場での回答を避けることにしたが……



 これは、真面目に幼稚園の先生を目指した方が良いような気がしたぞ。

 帰ったら、みんな弟妹に相談してみるか。




 ※作者より


 次回の更新は未定です。

 なるべく早く再開しますので、お待ちくださいね。

 m(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る