第220話 合コン ①

【竜ヶ崎ほたるside】


 初めての教師生活、初めてのクラス副担人は、やることも多く アッと云う間に時間が経ち、いつの間にか体育祭も過ぎていた。

 今は、来月から始まる夏休みの宿題のテキスト選びを由利子先生から任されて、教材会社の資料を見ていた。


「ねえ、竜ヶ崎先生、少しよろしいかしら ? 」


 顔を見上げると、先輩教師の野呂井のろい未紗みさ浦見うらみ益代ますよ阿久間あくま彩子さいこが居た。


 声をかけて来たのは野呂井先生だったみたいで、わたしがうなずくと話し始めていた。


「竜ヶ崎先生は、今度の日曜日は空いているかしら ?

 よかったら、私達と一緒にしない ? 」


 合コン……大学生時代にも友人に誘われたことがあったけど、いつも理由を付けて断っていた。

 どうしても、お兄ちゃん竜ヶ崎忠夫以外の男の人は考えられなかったから……

 お兄ちゃんが大好きだった、わたし。

 異性としても好きだったと気がついたのは、お兄ちゃんが結婚してから、しばらく経ってからの事だった。

 もちろん、お兄ちゃんと結婚した お義姉ちゃん達も大好きだから、尚更 悩んだりした時期も有ったけれど……


「 アンタ達、蛍先生を自分たちのナンパのにするつもりなんでしょう。

 いくら何でも焦り過ぎよ !

 聞いたわよ。 貴女達、四股されたんだって、『須々木野のお坊ちゃんに遊ばれた』って、広報こうほう喋留子しゃべるこ先生が噂していたわよ 」


 由利子先生が助け船を出してくれたようで、野呂井先生達は、たじろいでいる。

 正直、助かった。

 しかし、野呂井先生達は必死で由利子先生に直訴し始めた。


「そんなぁ~、由利子先輩。

 もう相手側に若い女性教師を連れて行くことを約束してしまったんですよ~。

 ここは見逃してくださいよぉ~ 」


 ワアッ、由利子先生の言う通りに、わたしは生け贄だったみたいだわ。

 由利子先生は少し考えた後に、


「それなら、私も参加しよう。

 なぁ~に、皆の邪魔はしないさ !

 ただ、不埒な事を考えているやからが居たなら、その限りでは無いがな……フッフッフッ 」


 野呂井先生たちの顔色が悪い。

 それも無理からぬことで、わたしや野呂井先生より遥かに年上であるはずの由利子先生の方が若く見えるのだから。

 その上で美人だから、一緒に合コンに行ったら わたし達の方が不利に成るかも知れないのだから。


 野呂井先生たちを魔女と言っている生徒がいても由利子先生に、そんなことを言う生徒は居ない。

 そう、洒落に成らないからだ。



【野呂井未紗みさside】


 私達は魔女である。

 別に厨二病では無く、正真正銘の魔女なのである。

 だから魔法で年齢や姿を誤魔化して社会に溶け込んでいるけど……

 由利子先生は正真正銘の普通の人間のハズなのに、ただ者では無い気配を漂わせている。

 だからこそ、由利子先生の申し出には断れるハズも無く、了承せざるを得なかった。


 ただ、決定事項なのは 広報こうほう喋留子しゃべるこ先生は、後で絶対にシメルと言うことだ。


 今回のターゲットは良い所のお坊ちゃま達、

 身長が普通に170センチぐらいで±5歳ぐらいで太ってなくて、ハゲてなくて、煙草を吸ってなくて、ギャンブルしなくて、お酒もほどほど。


『年収は並程度で学歴高め、大卒ぐらいで、将来 相手両親との同居がない。

 普通の家庭で育った普通の人で良いよね』

 そう相談していた私達には打ってつけのターゲットだった。

 決して、魔女の弟子である娘たちに先を越されて焦っている訳では無いったら無い !


 私達に恥をかかせた、須々木野誠の行方がわからないので復讐することも出来ないのだから、せめて良い男をゲットして、御近所を見返してやりたいと思ってもバチは当たらないと思う。


 由利子先生が一緒に来ることは誤算だけど、ハルト先生とラブラブなハズだから私達の邪魔はしないよね、たぶん、きっと。





 ※作者より


 この世界は『大江戸くんの恋物語』の続編であり、一夫多妻、多夫一妻、夫婦別姓、が認められている世界です。

 ほとんどが 一夫一妻ですが、大江戸家や竜ヶ崎家みたいな一夫多妻な家もあります。

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