第218話 妄想、夢想、幻想 。

 奥さまの名前は蝶子、そして、旦那さまの名前は嵐。ごく普通のふたりはごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。でもただひとつ違っていたのは旦那さまは軍神だったのです。


「おはよう、蝶子。

 もう、そろそろ起きないと学園に遅刻するぞ。

 保険医とは云え、遅刻は不味いだろう。

 ほら、茂庭華モニカも起きないとダメだぞ 」


「う~ん、おはようダーリン。

 今日の朝ご飯は何かしら ? 」


 結婚して子供も居るのに、相変わらずラブラブな二人である。


「今日は、白いご飯に目玉焼き、鯵の干物の焼き魚、ほうれん草のお浸しに、味噌汁は蝶子の好きなナメコ汁だぞ 」


 嵐は専業主夫だけあり料理が得意だった。


「パパ、モニカねぇ、ご飯よりパンがいいなぁ~、お・ね・が・い・パパ ♪ 」


「よ~し判った。 茂庭華には、食パンを用意してやるからな ! 」


「モニカ、イチゴジャムがいいなぁ~ 」


「判った、判った、イチゴジャムだな。

 ちゃんと用意してやるから、起きた、起きた ! 」


 娘と妻には、とことん甘い嵐だった。




 ♟♝♞♜♚♛


【嵐side】


「ふっ ふざけるなぁー !

 おのれ、由利凛め、こそこそ何かしていると思っていたら、ヨムカクのヨムカク9Web小説コンテストの下書きを書いていたとは !

 勝手に俺をモデルにしやがって !

 しかも俺の結婚相手が蝶子だと、それも娘が茂庭華に成っているのは、アレス蝶子アフロディーテ女神ハルモニアーをモデルにしているのか。

 どうせなら、蛍を妻にしたなら良かったのに、ふざけやがって許さん ! 」


 由利凛がパソコンから離れている間に何をしているのか気に成って画面を覗いて見れば、とんでもない物を見てしまった。


 まさか、未来日記とかじゃ無いよな。

 念の為に削除しようとしたところで、バッチリ由利凛に見つかってしまった。


「……み~た~な~、お兄ちゃん !

 勝手に削除なんかしたら、妾は全力で蝶子ちゃんを応援して本当にしてやるのじゃ !

 蛍先生にも、有る事無い事を吹き込んでやるのじゃ! 」


 こっ コノヤロ、俺の弱点を的確に突きやがって、邪神だったのは伊達じゃないというのか !


「せめて、名前くらい変えろ !

 でないと、運営に連絡してやるからな !」


 しぶしぶながら由利凛は、


「判ったのじゃ。

 その代わり、お兄ちゃんも妾……妾たちを実名で書かないと約束して欲しいのじゃ 」


「フン、そんなことか、約束してやろうじゃないか !

 由利凛、お前には絶対に負けないからな!

 俺に順位で負けても文句を言うなよ ! 」


 挑発すると由利凛もノッテきて、


「ふふーんだ ! お兄ちゃんに『ギャフン ! 』と言わして、どっちが上か教えてやるのじゃ ! 」


 バチ バチ バチ バチ 💥


 今日日きょうび、『ギャフン』なんて言わねえよ !

 俺には妹が三人に巧も居るから由利凛よりは有利なハズだ。

 せいぜいが、恵利凛とマーズ、凪くらいが由利凛の味方だから、この勝負は俺の勝ちだな。


 俺の傑作を見た時の由利凛の顔を見るのが楽しみだぜ !


 カッ カッ カッ!


 笑いがこみ上げて来て我慢出来なかったぜ。




 ♟♝♞♜♚♛


【こけるside】


 アッ アホだ、コイツら。

 明日菜や英里香を見ると二人ともため息をしていた。


「あ~、何時ものじゃれ合いだから気にしないで、こける 」


 英里香が苦笑いしながら言ってきた。

 なるほど、アイツらなりのコミュニケーションと云う訳だな。


 鈍感系主人公と云う言葉があるが実際に居るとは思わなかったな。

 嵐は、かなりモテるのだが本人が残念な為か気付かないで居る。

 もっとも、それを利用した奴だったなら友達ダチになど成ってないんだがな。


「俺には蛍先生よりも、蝶子ちゃんや由利凛ちゃんの方が嵐には現実的だと思うんだが、嵐は年上スキーなのか ? 」


 俺が言うと、英里香や明日菜が複雑そうな顔をしていた。


「う~ん、妹からしたらを取られそうだから抵抗があるのかな ? 」


ちがーーーう違う!」

「違います !」


 全力で否定する二人に圧倒されてしまった。

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