第187話 卒業旅行 ⑧


【嵐side】


 そろそろ龍騎と交代してやるか。

 こけるのアホを連れて来たのは妹たちだしな。


「龍騎、交代だ !

 少しは陽野芽や星奈と遊んで上げないと、忘れられてしまうぞ ! 」


 何か言い返してくるかと思っていたのだが、


「サンキュー、恩にきるぞ 嵐 。

 このままだと、本気マジで兄貴の座を嵐に取られてしまいそうだからヒヤヒヤしていたんだ 」


 そう言い残して、陽野芽たちの元に駆け出して行った。

 ……何時も、それだけ素直なら喧嘩せずにすむのにな。


 ところで、


「おい、何時まで狸寝入りをしているつもりだ、こける !」


 俺の言葉に反応して起き上がった こけるは、


「ちぇっ、よく俺の狸寝入りを見抜いたな、嵐 !

 だませる自信は有ったんだけどなぁ~。

 隙を見付けて、天音さん達に逢いに行くチャンスだったのに残念 ! 」


 本当にブレない奴だな、こけるは。

 それよりも、


「こける、お前 一度 俺と手合わせをしろよ !

 お前のその身体、武術をやっている身体つきだな 」


 俺の誘いに こけるは嫌そうに、


「え~~~~、嫌だね、嵐って一回でも負けたら面倒くさそうじゃないか ! 」


「ほぅ~、言うじゃないか こける !

 ますます、お前と手合わせをしたくなったぞ ! 」


 こけるの奴が、何処の神だか知るには手っ取り早いのも理由の一つでもあるんだがな。


 結局、上手く誤魔化されてしまい 手合わせは出来なかった。



 晩御飯は、バーベキューだった。


 肉っ肉っー !

 腹が、さっきから鳴りっぱなしだ。

 名一杯食っちゃるぞ !


「嵐って、本当に小学生みたいだな 」


 聞き捨てられないことを言う こけるを無理やりに連れて行った。

 この男は目を離すと何をヤラカスか判らないからな。

 最初、文句を言っていた こけるも 上等な肉を見て気が変わったらしく、俺達と争うように食べていた。


 フン、お前等だって俺と変わらない癖に、ええカッコつけばかりしているなよ !


 ♟♞♝♜♛♚


 その日の夜、22時ごろに成り皆で大浴場に行く事になった。


 当然、俺と龍騎は こけるを両側からホールドして連れて行った。

 巧とロッキーは、不測の事態に備えて少し離れて監視している。

 何らかの神の転生体である以上、油断は禁物だ。


「 なあ、女子の風呂を覗きに行かないか ?」


「「「「 行かない ! 」」」」


「つまらねぇ~奴らだな、お前たちは !

 青春の一ページだぞ、若くねえなぁ~ お前等 」


 本当に煩悩の塊だな、こけるは。

 後で妹たちも交えて検証が必要だな。

 ロッキーを含めて、知恵の神や女神が4人も居るんだから手がかりくらいは解るかも知れないな。


 大浴場に着くと、


「おおおぉ~ ! すげぇ~豪華 !

 何だよコレ、室内だと思っていたら露天風呂かよ !」


 こけるは感動しているが、広い風呂を見て俺は、


「泳ぐなよ、嵐 ! 」


 巧から注意されてしまった。

 付き合いが長いせいか思考を予測され易いんだよな。


「わかり易いんだよ、嵐は単純だから ! 」


 ウッセェーよ、ロッキー悪友



 ♟♞♝♜♛♚


 一方、日本では



 八咫烏ヤタガラスだ!


 ようやく、カラスの正体に気が付いたニワトリヘルメスは、八咫烏の見ている方を見て気が付いた !


 バサッ バサッ バサバサ !


 飛び立つ八咫烏の後を追いかけるようにして、ニワトリヘルメスは、


 最初から飛んで逃げることを忘れていた自分に恥ずかしくなりながら、八咫烏に口止めを出来ないか考えていた。


 ……八咫烏が、何故ここに居たかと疑問に思ったのは、だいぶ後に成ってからだったダメなヘルメス知恵の神であった。

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